橘井堂 佐野
2019年11月21日

木内みどりさん、早すぎます!


木内みどりさんが亡くなられた。
急性心不全とのこと。
あまりにも、尊敬する先輩たちが続いて旅立たれるので、なんと言って良いかわからないし、第一、まだ、亡くなられたと言われても、その事実がどういうことなのか、よくわからない。

わかるのは共演させていただいた時のこと、舞台に立つ木内みどりさんの姿。
共演させていただいたのは2016年、NHK名古屋局制作のラジオドラマ「桜を刈る」の、ただ一作だけ。
それでも、深く印象に残っている。
夫婦役で、ラジオドラマなのに、スタジオにお布団敷いて、二人で寝そべって、添い寝して語り合うシーンなど、ワンシーン、ワンシーン、リアリティを失わないよう、やりにくいところは妥協せず、監督たちともよく話し合って録音したっけ。
ラジオドラマが好きだった原田芳雄さんとのドラマ、木内みどりさんのドラマデビュー作にして主演作品「日本の幸福」(1968)は、日本テレビ系列だったので、中学生当時、故郷の島根県松江市で放送はしていたはずだけど、記憶にはない。
ただ、佐藤信さん作詞、加藤和彦さん作曲の劇中歌「日本の幸福」はシングルレコードでよく聴いていた。
その曲のこと、初めてのドラマのことを、ラジオドラマの収録で訪れていた名古屋で、スタッフ、キャストでの食事会の時に、思い出深く話してくださった。
デビュー当時、まだ、高校生だった木内さん。
原田芳雄さんがやさしく接してくれたこと…芳雄さんも可愛くて仕方がなかったんだろうな〜。

でも、やはり、なんといっても、木内みどりさんの女優としての凄みを見せつけられたのは山崎哲さんの転位21での舞台「子供の領分」「エリアンの手記」「マーちゃんの神曲」。
どの作品も深く心に残っているけど、「マーちゃんの神曲」での、柄本明さんとの共演も忘れがたい。
もどかしく、生々しく…。
金属バット殺人事件、中野富士見町中学校事件、藤沢悪魔払い殺人事件…家庭内暴力、いじめ、カルト宗教…家庭内に、学校に、社会に、身の置き所のなさを感じ、もがく身体と、舞台の上の役者は、同じように身の置き所を求めて彷徨い、たどり着いたのだろうか?

木内みどりさんの演じる身体と、世の中に対する眼差しとは別物ではないだろう。
たった一度の共演だったけど、そのことがひしひしと伝わってきたことを忘れはしない。

木内みどりさん、残る想いは溢れるほどあるに違いないけれど、その想いを、きっと、どこかで、だれかが、かならず受け止めて、これからの道標となっていくことと信じます。

安らかにお眠りください。
合掌。

橘井堂