橘井堂 佐野
2016年12月30日

根津甚八さん、さようなら


若松孝二監督、安保由夫さん、金子国義さん・・・状況劇場や若松組、唐さんの周りに集っていた人たちが次々と亡くなっていくなか、また、一人・・・12月29日に根津甚八さんが亡くなられた。
先日終えたばかりの篠原勝之さん原作の舞台「骨風」は、旅立つ人たちにも捧げられた生と死に向き合う芝居だったが、あらためて想い返すことになってしまった。
稽古中から、作・演出の山崎哲さんから根津さんがそう長くはないかもしれない・・・とは聞いていた。
根津さんと仲の良かったパリ在住の画家、大月雄二郎さんからも連絡が入り、四谷シモンさんらと稽古しながら根津さんのことを気にかけながら・・・の稽古場でもあった。

根津さんと僕は、状況劇場時代、一緒にいたことはない。
けれど、紅テントの人たちは皆そういうところがあるけれど、同時期にいようがそうでなかろうが、撮影現場などで顔を合わせた時には同じ空気を知っている人間として通いあうものがある。
いや、これは一方的な思い込みかもしれないけれど。
「骨風」でもご一緒させていただいた吉澤健さんも30年ほど前、テレビドラマでお会いした時にすぐに打ち解けてくださった。
麿赤兒さんも、いつもそうだな・・・で、つい甘えてしまう。

根津さんとも、初共演は25年以上前になるかな?
根津さんは役名と本名を取り違えて、僕のことを本番で「おい、サノ〜!!」と呼んでしまいNGが出たことがあったっけ。

1974年、状況劇場「唐版・風の又三郎」での根津甚八を忘れることはできない。
僕は状況劇場で根津さんのように看板を背負うようなタマではなかった証に、根津さんの演じた「二都物語」の田口役を「新・二都物語」で演じていた折、結局、唐さんに途中で降ろされてしまったという苦い思い出がある。
けれど「唐版・風の又三郎」での唐さんや李礼仙、大久保鷹、不破万作、十貫寺梅軒、小林薫・・・そして根津甚八・・・そうした役者たちが集う紅テントに憧れてのちに入団したことは大いなる糧となっている。

根津さんの、あの甘さと男でもクラクラしてしまうような、あの色気・・・。
繊細さと豪胆さを兼ね備えた根津甚八という俳優に憧れていたことだけは正直に告白しておこう。
根津さんのように、唐さんのように、大久保さんのようになりたい・・・というわけではなかった。
なれるわけもないことは最初からわかっていた。

けれど、あの、硬質さと腐乱したような世界が溶け合って結晶化されるような世界と身体には、今でも憧れ続けているのだ。
根津甚八さん、安らかにお眠りください。
合唱。

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