橘井堂 佐野
2010年1月28日

『RAILWAIYS』~0号試写を観ての感想

2010年1月27日、錦織良成監督の最新作『RAILWAYS』の試写。
島根県、宍道湖の湖北、松江と出雲大社、出雲市を結ぶ一畑電車(いちばたでんしゃ〜通称、バタデン)を舞台にしたローカル色豊かな映画だが、都市と田舎、企業のリストラ、家族のあり方・・・現代の世相を反映しながら、普遍的なテーマを掘り下げた名作となった。
5月に松竹、全国200館の配給予定。
美しい故郷の風景、80年走り続けたデハニ50系の木造電車のオレンジ色の車体は、かぎりなく美しく、最初から最後まで目が潤みっぱなしだった。

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★デハニ50系。デは電車のデ、ハはイロハのハ…3等車…普通車両、ニは荷物のニ。そんな台詞もあるテッちゃん映画でもあります。マニア必見!! ホーランエンヤの実際の映像とか…歴史的資料としての価値もある「RAILWAYS」です。

・・・でも、これは、故郷を想う個人的な感傷も大きく働いているので、作品自体の冷静な判断はできないかもしれない・・・。
それでもな・・・きっと、日本中、世界中のひとたちが共通に抱えている感覚にちがいないとは思うのだけれど。
ブラジルのサウダージ・・・むしろ、そちらに近い感覚なのかもしれないと、ふと思った。
佐野は一畑電車の部長さん役。
49歳で自ら大企業のリストラを申し出て、子どもの頃の夢だった一畑電車の運転士になる夢を果たす主人公は中井貴一さん。
社長の橋爪功さんと3人のシーン、本当に楽しかった・・・。
はじめて、出雲弁で演技をして、かなり嬉しかったです。
出番は多くはないけれど、キャストとしてよりも、たくさんの人に島根の、出雲地方の良さを知ってもらえたら・・・と想いも熱くなります。

錦織監督とは初めてのお仕事でしたが、顔を会わせると、ついつい熱く出雲のことを語ってしまいます。
これからも、色々と楽しみです!

出演者のみなさんにも、本当に出雲地方を気に入ってもらえたようで、それも嬉しく・・・。
三浦友和さんと山口百恵さんの息子さん、三浦貴大(たかひろ)さんの演技も、さすが、サラブレッド!と唸らされましたし、中井貴一さんと高島礼子(オレは、今までのレイコちゃんのなかで、一番好き!)さんの娘役の本仮屋ユイカさん、素晴らしかったです!!!
おばあちゃん役の奈良岡朋子さんとのシーン、お二人とも、本当に心が通っていて、・・・こうでなきゃな〜と、また目が潤み・・・。

他の出演者の方々も、長期滞在ロケで、出雲の空気に溶け込んでいて、おもわず、ニヤリニヤリ・・。
語り始めたら止まりそうもないのですが、一畑電車と、写真、映画をめぐる縁のお話しを最後に・・・。

おととし、東京ミッドタウンと大阪の富士フォトサロンでの佐野のはじめての写真展『あなたがいるから ぼくがいる』は、鳥取の植田正治写真美術館でのトークショウに故・植田正治さんのお孫さんで、
一昨年、残念ながら他界された仲田薫子さんから声をかけられたのがきっかけでした。
2004年だったかな?・・・で、すっかり植田正治のとりこになった佐野は、その流れで、『つゆのひとしずく』を監督したわけですが、植田正治の写真を176点モンタージュしての物語の導入に、代表作のひとつである『停留所の見える風景』を使用しました。
その風景の中に、男が吸い込まれていくのですが、その駅舎の場所は、植田正治19歳の時に、佐陀神社のお忌み祭りの帰りに、船から撮られたとのことでしたので、電線が走っていることと、高台にあること、などから、一畑電車の「伊野灘」にちがいないとつきとめ、写真におさめていたのです。
で、その写真を、さらに写真展の時には、展示の後半の組写真の導入に使ったのですが、なんと!『RAILWAYS』でも、「伊野灘」が舞台になっているではありませんか!!

監督と出会う前のことですし、監督も僕の写真展のことなどは知らずにいて・・・。
写真の神様、活動写真の神様が導いているとしか思えないような、偶然と必然に、ただ、唖然としておりました。

加えて、写真展では、佐野家に残る明治時代からの家族写真、記念写真などのなかに、父親が、松竹大船撮影所の診療所に勤務していた時のものがあったのですが、そこに、中井貴一さんのお父様である、佐田啓二さんと、後ろの方に父親が一緒に写っているのです。
佐田さんも、亡き父も、このことを知ったら、さぞかし驚いたことと思いますが、松竹配給、小津安二郎の映画に熱中し、導かれるかのようにして映画の世界に入った佐野ですから、この奇しき縁は、ただの偶然だとはとても思えずにいるのです・・・。

作品の内容も、小津映画が抱えていたテーマの現代版といったところで、鎌倉や茅ヶ崎を通る列車が、一畑電車と連なって過去と未来を行き来するかのようです。

線路は続くよ、どこまでも・・・。

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★前列中央、帽子をかぶっている佐田啓二さん。最後列、右から3人目が父、佐野義和。まさか、子どもたちが半世紀後に共演するとはつゆほども知らずに…。(昭和30年、松竹大船撮影所)今はなき大船撮影所、佐野も中井さんも、やはりここで撮影された映画に出演していたわけですが…この縁、何でしょう?ちなみに、佐藤浩市さんのお父さん、三國連太郎さんも、同時期に撮影所にいらっしゃったわけで・・・浩ちゃんとの共演も続いたしな〜なんだろな〜。


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★54年後の記念写真。中井貴一さん、佐野史郎…父の歳はとっくに越えて…。左は橋爪功さん、佐野の隣が三浦貴大クン。
右上の初期の会社のマークは、美術さんが復刻したもの!現行の双葉のマークと比べると、初期の鉄道会社のイメージがくっきりとしています。

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