ドラマ「青い鳥」の伏線を読み解く
1997/10/17
今回はドラマ『青い鳥』の2話からの話しを聞きましょう。
柴田理森(豊川悦司)と寿司屋で思い出話をするところがあるんだけど。
ああ、ハプニング大賞で見た人もいる場面だね。
そうそう、あのシーン。
あそこで話される、理森(よしもり)と理森のアニキの敬文(たかふみ)とその親友の綿貫広務(佐野史郎)に関しては、脚本の野沢尚氏による裏ストーリーのようなものがあるんだよ。それによると、広務(ひろむ)は敬文と仲のいい理森に対する嫉妬心のようなものがあったんだな。その三角関係は、激流に取り残された理森を助けようとして敬文が亡くなってしまうことによって崩壊するんだけど、理森はそのことによって負い目をずっと感じている。ところが、その川に行けばと勧めた広務は、理森が溺れてしまうことを無意識に望んでいたと思うんだよね。きっと、理森のお兄さんと広務の間には少年の同性愛に近いような感覚があったと思う。というような解釈の上で、演じてるんだよ。
性的に未分化な時期の三角関係が成立していることを、みなさんにはまず覚えておいてほしい。
はい、分かりました、先生。(笑)
こういう台本分析というか、世界観を解釈するためのことはディレクターさんやプロデューサーさんにいつも話すし、冬彦役の『ずっとあなたが好きだった』や『誰にも言えない』でもやってたんだけど、今回はなかなか難しいね。
その裏ストーリーの伏線はどこで顕在化してくるわけ。
広務は町村かほり(夏川結衣)を暴力亭主から奪って田舎に戻ってきて、理森と再会するんだけど、そのかほりと理森が逃避行してしまうという三角関係がまた出来てしまう。広務はなにも悪いことをしていないどころか、暴力亭主からかほりを救ってやったのに、また理森によってその関係を壊されてしまうわけ。
ハプニング大賞では野際陽子さんに、また「悪い人役」だと言ってた割には、かわいそうな人役なんだね。まあ社長の御曹司で市長選に出馬しようとすること自体、権力的だからちょっと嫌味な感じはするけど、東京から田舎に帰ってきてイジメの的になったり公立中学に入ったり、ロックバンドを組むところなんて、ほとんど実生活の佐野くんを見るようで可笑しいね。
その田舎の閉塞感を突破するための突破口に、理森がなると直感的に閃いたんだけど、それが違う突破口を開いてしまったんだな。
それと、今回の主題歌はglobeなんだけど、「青い鳥」といえば私らの世代で言うとやっぱりタイガースでしょ。だからglobeはタイガースの「青い鳥」のアンサー・ソングのつもりだと思ってるよ。
曲は歌詞も小室哲哉?
そうでしょ。そういえば、小室氏を最初に観たのは20年ぐらい前だよ。新宿の厚生年金ホールで高校の同級生だった山本恭司のバンドBOW WOWを観たときの前座がギズモだったんだよ。思えば、そのギズモに居たのが小室氏だったんだな。そのあと宮沢りえ主演の映画『ぼくたちの七日間戦争』の音楽がTMネットワークだったから、いっしょに舞台挨拶をしたりしたよね。あの映画もヒットしたから、今度もヒットするといいね。(笑)
「青い鳥」は全国縦断ロケもウリなんでしょ。
信州にロケに行くときなんかは、上諏訪に向かう夏の中央高速でテンプターズの「エメラルドの伝説」とか、タイガースの「青い鳥」、スパイダースの「夕陽が泣いている」を聴いてるんだけど、気分が盛り上がるんだよね。
ああいうGSサウンドを聴きながらこのドラマを観てみるのもいいゾ!
いや、それは難しいでしょ。実際はglobeがかかってるわけだから、無理だよ。
いや、ヴィデオに録って、GS(グループ・サウンズ)をあててみるんだよ。
そんなことまでする人は、まずいないね。
そういうカルトな見方もお薦めって。(笑)オープニングはタイガースの「青い鳥」で、盛り上がってきたところで「美しき愛の掟」、理森と誌織(鈴木杏)が二人で満天の星空を見上げるところでは、やっぱり「星のプリンス」だよね。もう豊川ファンはたまんないよ、星のプリンスそのままだもん。
最初の話に戻れば、昔のディープな体験を裏に隠しもちながら、寿司屋で再会した理森と広務が話しているバックにかかっているのが、ディープ歌謡の藤本卓也作品「君が欲しい」だよ(選曲・佐野史郎)。この歌詞をよく聴いて欲しいよね。
普通、寿司屋ではかからないけどね。すさまじいなあ。
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