橘井堂／我が師、遠藤賢司〜純音楽魂よ永遠なれ!!〜

橘井堂　佐野
2018年2月20日

▼細野晴臣氏との出会い（1966年）

遠藤◆僕が19歳の時に細野（晴臣）くんと会ったんだけど、その時の細野くんが観た僕の印象というのは、大根もって、ドノヴァンのLPと古賀政男のギターをもって、下駄を履いて学生服の上にちゃんちゃんこを着てたってずっと言うんだよね。（笑）下駄は履いてないけど、ちゃんちゃんこは当たってるかもしれない。
佐野◆エンケンは大学生なのに、学生服だったんですか？
遠藤◆金もないし、そう言われれば学生服だったと思った。
佐野◆そのころギターはもう弾けたんですか？
遠藤◆AmとCかな。DとGとAも弾けた。ドノヴァンの「カラーズ」はそれで弾けるから。チェックのビニールケースにギターを入れてたね。
佐野◆ああ、ありましたね。僕も使ってました。
遠藤◆今あれがあったらカッコいいのにね。
佐野◆でも、雨にあたると滲みちゃってギターが緑色になったりするんだよね。（笑）
遠藤◆あはは、内側のフェルトの緑色がうつるんだな。（笑）あのチェックでハードケースがあったらカッコいいよね。女の子とか持ちそうじゃない。
佐野◆細野さんとは学校で会ったわけじゃないんでしょ。
遠藤◆俺に古賀政男ギターを貸してくれた奴が明治学院大学の同級生で、飯島燃料店の息子なんだよ。その飯島くんのウチが、細野氏のウチの50メートルぐらいのところで、高校の同級生だったんだよ。飯島と俺が白金の交差点を歩いていたら、公衆電話で電話していた男が（何処に電話してたんだろうね？　不思議だよね。自分のウチはすぐそこなのに）、電話ボックスから顔を出して「おっ、飯島」って言うんだよ。飯島も「おお、細野」って言って、今では売ってない『ドノヴァンのおとぎ話』を俺が持っていたから、あの低音の声で「おっ、君、ドノヴァン好きなの？」いうのが最初の出会いだね。「ああ、好きだよ」って言ったら、「ウチ来ない？」って言われたから「うん」ってそのまま遊びに行っちゃったんだよね。
佐野◆へー、はじめて聞きました。
遠藤◆古賀ギターを持っていたからボブ・ディランの「くよくよするな（Don't think twice, it's alright）」をでっかい声で唄ったら、普通のウチだからお茶を持って来たお母さんがガラッと戸を開けて、「あんまり大きな声で唄っちゃダメですよ」って叱られちゃった。
佐野◆あはははは。その前に、玄関に入るところに噴水があったという話しは？
遠藤◆玄関を入ったら銅像があるんだよ。
佐野◆誰の銅像ですか？
遠藤◆国立音大を作ったおじいさんだっけな？　とにかく「おじいちゃん＊なんだ」と言われて「ほーん」と思ったんだけど、ちっちゃい庭の真ん中に銅像が建っていて、ドライアイスみたいに霧がかかってるんだよ。
それでセーラー服の女の子が出て来て、「ああ、かわいい娘だな」って思ったら細野氏が「妹だよ」と言って、「よろしくー」とか言って行っちゃった。「東京の高校生だ。かわいいなー」と思ったんだよね。（笑）俺も大学生なのに高校の学生服着てたんだけど。（笑）
佐野◆あはははは。
遠藤◆それで、10年ぐらい前に細野氏にその話しをしたら、「あそこに庭があって」「ああ、庭があったね」「池があって」「池？　池なんかないよ」って言うんだよ。「おじいちゃんの銅像は？」「銅像なんかないよ」って言うんだ。よく考えてみたら、霧がかかってるというのも変な話しだよね。（笑）妹さんは本当にいたんだけど、池と銅像に関しては「俺が言うんだからないんだよ」って細野氏は怒っちゃったんだよね。（笑）最後に「じゃあ、お母さんに訊いてみて」って言ったんだけど、「ないよ！」って言うんだ。
佐野◆これはね、エンケンとの25年の付き合いから言うと、エンケンは間違えて覚えてることが多い。（笑）
遠藤◆本当にそう。
佐野◆「あのとき、ああ言ったよね」って一回思い込んじゃうと刷り込まれちゃう。
遠藤◆俺は自信持ってたんだよね。国立音大のおじいちゃんまでは本当なんだけど、銅像は違うみたいだね。
佐野◆それは別のところで見たものが組み合わさってるんじゃないですか。仮説としては。
遠藤◆おかしいなー。だから、細野氏の話しをいまだに信用してないんだよね。（笑）
佐野◆そこまでいくと喧嘩になりますね。
遠藤◆ちょっと怒ってたから、たぶんないんだろうな。
佐野◆そんなことで友情にヒビが入ったら、つまらないですものね。
遠藤◆二、三回喧嘩したことがあるけど、これが一番深かった。（笑）
佐野◆そのときいっしょに演奏したんですか？
遠藤◆いや、一切ないね。
佐野◆細野さんはエンケンの唄う「くよくよするなよ」を聴いていたんですか？
遠藤◆ギターはもう一台あったんだろうから、お母さんに怒られなかったらいっしょに演ってたかもしれないね。
佐野◆ああ、初セッションが。（笑）
遠藤◆俺も独りで「ウアー」って唄うタイプだから、人といっしょにやるという部分がなかったのかもしれない。
佐野◆そのとき細野さんのやっているバンドの話しなんかはしなかったんですか？
遠藤◆ベンチャーズの曲を演っているような話しだった。
佐野◆エイプリル・フールより前ですね。
遠藤◆バーンズとかあったっけ？
佐野◆松本隆さんとバーンズをやってましたから、そのころですね。
＊【中谷孝男】（なかたにたかお）細野の母方の祖父。国立音楽大学音響工学科講師
をつとめた。ピアノの調律家でもあった。ピアニスト/指揮者のレオニット・クロイツァーのマネージャーであったこともある。（細野晴臣「ENDLESS　TALKING」より）

▼14歳の佐野が「ほんとだよ」を聴く（1969年）

佐野◆僕は14歳の時（1969年）にラジオから流れて来た「ほんとだよ」を聴いた時から好きになりました。TBSの朝の番組「ヤング720」に出演された時も食い入るようにして観ていました。実際にテレビで観ることが出来たというのは大きかったですね。
最初に買ったのは『ほんとだよ／猫が眠ってる』（1969年）のシングルで、このライナーノーツを加藤和彦さんが書いてらっしゃって、この人たちはすごいぞと中学生ながらに思ってました。あとジャックスとか。
遠藤◆昔は古文調にコピーを書いたりするから、加藤和彦は「団子っ鼻のジョージ・ハリソン」と書いてあった。
佐野◆そうそう、「いと、おかし」みたいなことが書いてありましたね。
遠藤◆『猫が眠ってる』の録音では、「ミュージック・マガジン」の中村とうようさんに事務所の人がタブラを借りてきてくれて、それを使ったんだけど、スタジオでパッと割れちゃったんだよね。それをいまだに「あれは誰が責任を負ってくれるんだ」って言ってるらしいよ。（笑）このまえ「ミュージック・マガジン」のインタビューがあったんだけど、「いまだに言っていますよ」って言われた。（笑）
佐野◆40年近く前のことなのに。（笑）
遠藤◆まあオーヴァーに言ってるんだろうけど、「忘れてない」と言ってたらしいよ。事務所の対応とかも含めてカチンときたんだろうね。あのころのタブラは、ものすごく貴重な物だったからね。たぶん中村とうようさんもインドから買って来たんだろうし。
佐野◆ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』（1967年）が出て、サイケデリックなインドっぽい物があった時期でしたね。
遠藤◆俺はラヴィ・シャンカールが好きだったのね。デビュー・シングル『ほんとだよ／猫が眠ってる』の時は、頭のなかで琵琶とシタールをドッキングさせた奏法をしたかったんだ。どちらかというと、琵琶の方が強いんだけどね。ガツーンと叩くような感じで。シタールって実際に触ってみると、つまらないんだ。どこを弾いても同じ感じだし。
ギターでも12弦ギターって、一瞬かっこいいなって思って使うけど、すぐに使わなくなるじゃない。あれと同じ。芯がないというか。
佐野◆僕もこの間12弦ギターを引っ張りだしてみたけど、確かにそうですね。（笑）
遠藤◆琵琶には寒さとか四季を乗り越えたビーンとした凍土を切り裂くようなところがあるけど、シタールはドローンとしている。
佐野◆琵琶は武満徹の……
遠藤◆そうそう、大学の春休みに茨城県の実家に帰って、屋根の上で布団を干して昼寝をしていたんだよね。猫が縁側に見えたりしてたんだけど、ちょうどその時に武満徹の『ノーベンバー・ステップス』（1967年）がラジオで流れたんだ。オーケストラといっしょに尺八や琵琶が演奏されていて、「なんだこれ？」と思った。その琵琶の音がずっと頭のなかにあったの。これはギターの弾き方にずっと影響していると思う。それを表現してやろうと思ったんだな。
すごく気になっていたんだけど、レコードを買ったのは10年ぐらい経ってから。琵琶を演奏していた鶴田錦史さんって、俺はずっと男の人だと思ってたんだけど、女の人だったんだよね。それはすごくショックだった。
佐野◆そのころは、もうギターを弾き始めてるんですね。
遠藤◆そう。
高校時代に近所に和田くんという友達のお家が八幡様をやっていて、高校生だから学生服で通りかかったら、ちょうどお祭りの準備をしてたのね。七人冠者みたいに人が並んでいて、篳篥（ひちりき）とか箏（しょう）の練習をしてたの。曲は「越天楽」だったんだけど、雅楽ってなんて綺麗なんだろうって思ったら、景色が止まって天女が天から降りて来たんだよね。そんな気がしたの。大きな杉の木の上から降りて来た。それがずっと頭にあって、それが「ほんとだよ」の原型。クレジットには木田高介の編曲になってるけど、だいたい俺がやりたいことを伝えてるから。篳篥と箏をフルートとチェロで作ってくれと言って作ったのが、東芝／EXPRESSのシングル「ほんとだよ／猫が眠ってる」。
佐野◆一番好きだったのは東芝から出ていた『カレッジ・ポップス・コンサート実況録音盤』（1969年）の「ほんとだよ」だったんです。中学生だから難しいことは分からないけれども、鬼気迫る演奏だと思ったんです。これには、他に加藤和彦さん、トワ・エ・モワ、ティンカーズ、ザ・リガニーズ、R.C.サクセションとか入ってたんですけど、みんないい演奏なんです。
遠藤◆「ほんとだよ」はよく作ったと思うね。何にも考えてないんだよ。とにかく、武満徹の『ノーベンバー・ステップス』の“あの琵琶の音”を出そうって思っただけだから。いまの人だったら、ギターをポンポン弾いて「僕はー、君をー」って唄うかもしれないけど、俺は琵琶だからね。珍しいタイプなんだろうなって、最近になってそう思う。それは正しかったと思う。
友達に教えてもらったドノヴァンには同じ「猫が眠ってる」っていう曲もあるし、根底にはドノヴァンの弾き方もあるんだけど、2フィンガーとか3フィンガーじゃなくて、5本の指全部を使ってやろうと、右の指も左の指も全部使って、ギターも叩いて、なにしろ宇宙全部を巻き込んでやろうと思ってた。
佐野◆当時僕は中学生でギターも弾けなかったので、「ほんとだよ」を聴きながらどうやって弾いているんだろうと思ってました。

▼LP『niyago』発売（1970年）

佐野◆細野さんとの白金での出会いが1966年で、お互いにプロになるわけですけど、再会はいつですか？
遠藤◆「ヤング720」（1969年5月7日収録）
佐野◆中学のときその放送は見てました。1969年（5月9日放送）ですね。
遠藤◆小坂忠がヴォーカルをやっていたエイプリル・フールとたまたまいっしょで、帽子をかぶってヒゲを生やしてるベースの奴が、どっかで見た顔だなと思ったら「あれっ」ていうのが再会だね。
それで、新宿の花園神社のそばにあったパニックに観においでよと言われて、エイプリル・フールを観に行ったんだよ。真っすぐな、すごくいい音だった。それで『niyago』のレコーディングを手伝ってくれないって言ったら、よろこんでやるよと言ってくれたんで、やってもらうことになったんだよ。
それで渋谷のヤマハではっぴいえんどの練習をしているから来ないかと言われて、行ったら、「いま浪人中なんだけど、ギターの鈴木茂くん」って紹介された。「かわいい、もてそうな子だな」と思ったね。ツイードの上下を着て、ナイーヴそうな。
佐野◆実際ナイーヴですものね。
遠藤◆そこではっぴいえんど［当時まだはっぴいえんどではなくヴァレンタイン・ブルーと名乗っていた］をはじめて見たのかな。そしたら、俺はその前に『遠藤賢司実況録音大全 [第一巻] 1968-1976』に入っている『ひとりぼっちのniyago』を録り終わってたんだけど、どうしてもはっぴいえんどと演りたいってダダをこねたんだな。
佐野◆あはははは。
遠藤◆「いっしょじゃないとアルバムは出さない」と言って、URCレコードの社長の秦（政明）さんを困らせて、「じゃあ、やってみたら」と言われて、はっぴいえんどとアオイ・スタジオで1970年の3月に『niyago』の録音をしたんだ。その前の『ひとりぼっちのniyago』は防衛庁の左の東京スタジオ・センターで1969年の12月に録ってるね。
佐野◆そうした関係性は田舎の高校生の僕らは知らなかったんですけど、エンケンとはっぴいえんどには何か同じようなものを感じていましたね。
遠藤◆俺は茨城の田舎から出て来てるから、何で通じたのか分からないね。やっぱり、音楽が好きだったからなんだろうな。俺は茨城の山田舎で、近所の造り酒屋のおじちゃんのところから大晦日に流れてくる音が綺麗だと思ったり、三橋美智也とかエルヴィス・プレスリーとか、良い音楽を聴いてきた。だから、俺は田舎に育って良かったと思う。田舎と東京と二カ所に住めるじゃない。
東京で育ったから良い音楽聴いてるなんて思わないけど、ただいろんな音楽を聴く機会は多いだろうね。だけど極端な話し、横浜のゴールデン・カップスが基地の街に育ったからいろんな音楽を聴いていていい音楽が出来るなんて話しは変じゃない。みんそれぞれに住んでいるところに音楽があるから、あとはその人の才能だよね。
畑があったり山があったりする、そういう風景を見て育った方が良いと思うんだ。それを誇りにすべきだと思う。情景が深いんだよね。ただ、精神的な田舎者にはなりたくないんだ。井の中の蛙にはなりたくないし、自分のなかの井戸の深さとか広さを大事にしたいんだよね。
俺は茨城の田舎で、いいものを見て来たからね。お百姓さんが芝居したり、自然に唄ってくれたり、そういうのを見て来たから得してると思うよ。昔はものすごくコンプレックスはあったけどね。はっぴいえんどとの差はそこだと思うんだよね。
俺は何でも取り込んでガーっと行く方じゃない。だから、間数とかほとんど考えずに演ってるんだけど、結局は合ってるんだよ。音楽の基本のブルースの間数と同じように、合ってるからはっぴいえんどともいっしょに出来たと思うんだ。
演歌の話しをしても、面白いねーというところは通じるからね。「そーなんだよねー」っていっしょになって笑えるというのは大きいよ。それが俺のはっぴいえんどとのつながりだと思う。
佐野◆でも、いっしょに笑えるって、それは音楽のことですよね。僕らも高校のバンドはいっしょになって毎日のように大笑いしてましたし、エカが大学の同級生になった嶋田（久作）を連れて来た時も、同じように笑えるからバンドに引き入れたりしましたからね。嶋田は異常なくらい無邪気に笑うし、おかしいポイントもよく分かってくれるました。もちろん、面倒なところもたくさんあります。ずっとしゃべってますからね。それも人に対して話すんじゃなくて、自分の確認のためにずっと話してる。おかしいですよ。
この間も実相寺昭雄監督のお葬式で、岸部一徳さんと嶋田がいて、嶋田が「あっ、佐野くん。この度はどうも」ってお辞儀するんだよね。あまりに他人行儀だから、「お前、何言ってんだよ」って言うと、「そうだよな、お前にこんなこと言わなくてもいいんだよな」って急に人間が変わるんだよね。（笑）

▼LP『第２回全日本フォーク・ジャンボリー』発売（1970年）

佐野◆高校生になって『第２回全日本フォーク・ジャンボリー』（1970年）を聴くようになったんですけど、最初は怖くて「夜汽車のブルース」と「満足できるかな」は飛ばしてたんだよね。（笑）高田渡とかなぎらけんいちの軽妙で楽しそうな曲の間に、急に怖いことになるので。（笑）
遠藤◆うははははは。
佐野◆はっぴいえんどの「12月の雨の日」を聴いて、「何だこの音は、日本にもこんなロック・バンドが出て来たんだ」と驚いて、ある日そのまま油断して聴いちゃったんですよ。（笑）そしたら「これは、すごい」ってわかっちゃって、今度はその飛ばしてたエンケンの曲だけを何度も聴くようになって、中毒になっていったんですよ。
それではっぴいえんどと遠藤賢司ばかり聴いていたから、高校時代のバンド（WIND CITY）のレパートリーは「はっぴい・えんどう・けんじ」。
遠藤◆高校の時に山本恭司くん（BOWWOW）といっしょだったんだっけ？
佐野◆キョウジとは高校で同級生になって、階段の下の天井が斜めの放送室でレッド・ツェッペリンの「Good Times Bad Times」のシングルを聴かせたのが最初じゃないかな。それからキョウジの幼なじみで僕と同じクラスだった小川（功）のところに迷惑なぐらい入り浸るようになって、そこでいっしょにレコードを聴いたりギターを弾いたりするようになったんです。
遠藤◆キョウジくんは何が好きだったの？
佐野◆テン・イヤーズ・アフターですね。アルヴィン・リー。
僕は同じクラスの小豆沢（茂）くんがビートルズが好きでギターもちょっと弾けるというので、じゃあいっしょにバンドをやろうということになったんです。
遠藤◆正式にはなんというバンド名だったんだっけ？
佐野◆いや、それはいいです。（笑）ビートルズからヴィールスになって、そこからドク（毒）になったんです。
遠藤◆それでドクになったんだ。いいじゃない。
佐野◆そのあとアズキ（小豆沢）がキョウジのお古のグヤトーンのエレキギターにエーストーンのファズ、それに僕がヤマハのFG-180にテスコのマイクをつけて、それにエカ（小川）のボンゴで演り始めました。ティラノザウルス・レックスがカッコ良かったのと、「新譜ジャーナル」にボンゴとアコースティック・ギターだけの頭脳警察の写真が載っていて「これだー」と思ったんです。だから、ボンゴを買ってエカに叩かせて、はっぴいえんどの「春よ来い」とか「ほんとだよ」を演ってたんです。
遠藤◆「はっぴいえんどうけんじ」という当時の録音を集めたCDもくれたよね。
佐野◆高校1年（1971年）の夏に中津川の第３回全日本フォーク・ジャンボリーに行って、どんどんはまって行きました。『niyago』とか『はっぴいえんど』とかよく聴いてましたけど、このころは松江ではURCのレコードを売っていなかったので、ポリドールから出た『満足できるかな』は買えたけど、『風街ろまん』は発売日にエカが米子まで買いに行ったりしてました。

★WIND CITY。左から小豆沢茂g、周藤芳行dr、小川功b、佐野史郎g/vo。
2014年10月18日、喫茶ＭＧ45周年記念Live「MG育ち」にて。

▼第３回全日本フォーク・ジャンボリー（1971年）

佐野◆前の年の中津川でのライヴをLPで聴いていたから、すごいストロークを期待してかぶり付きで観ていたら、ちょうど『満足できるかな』のレコーディング中で、「腕が痛いんだよね」って。
遠藤◆ああ、健忘症じゃないや……
佐野◆腱鞘炎。（笑）その時にはじめて「カレーライス」を聴いたのかな？
遠藤◆暴動が起きた時だよね。あれがなかったら俺はすごかっただろうな。
（吉田）拓郎が「人間なんて」をやった時だよね。あのあとメイン・ステージで「夜汽車のブルース」を演るはずだったんだよね。
佐野◆ああ、演ってたらすごかったでしょうね。
遠藤◆唄うって言えば良かったかもしれないけど、暴動ですごいことになってたからね。それで、マネージャーに止められて。「俺は遠藤賢司を聴きに来たんだー」って叫んでる奴がいたから、行っちゃおうかなとも思ったんだけど。ちょっと小高いところから見てたんだ。
佐野◆その夜に安田南が切れたんだよね。ものが飛んで来たりして。
遠藤◆あのとき無理矢理にでも唄ってたら、ものすごいことになってただろうな。MC−5以上のものがあったと思う。
佐野◆あの年に三上寛さんをはじめて見て、これは誰なんだと驚きました。不穏な空気が漂ってたんですけど、三上さんが出て来たら、みんな真剣に聴き入ってました。角刈りで板前さんみたいだし、何だろうこの人はと思いました。
遠藤◆安田南はその後？
佐野◆その後です。その前にはしだのりひこが出ていて、「帰れ」コールにあって泣いちゃったんですよ。俺は高校生だったし、かわいそうだから「そんなこと言わなくていいだろう。一生懸命やってるんだから、聴いてやれよ」って客席から言ってましたね。ああ、恥ずかしい。（笑）
そのあと三上さんが出て来て、「しょんべんだらけの」とか「パンティストッキングが」どうのと唄ってるし、何なんだこの人はと思いましたよ。それが終わってジャズの日野皓正とか安田南になったら、観客にからまれて、ぶち切れて「何言ってだよー」みたいになっちゃいました。
あの後にエンケンがメイン・ステージに出たら、それはすごいことになってたでしょうけど、サブ・ステージでもすごかったですよ。「ミルクティー」とか「カレーライス」とかすごく気持ちよかったですね。
遠藤◆俺の『春一番ライブ '74』（1974年）のライヴは聴いたことある？
佐野◆もちろん聴いてます。
遠藤◆怪我した後だったんだけど、「踊ろよベイビー」で客席に飛び込んだりしてたいへんだった。だから、同じようにメイン・ステージに飛び込む勇気がなかったのかなと、残念なんだよね。関係ない顔して出て行っちゃえば良かったなーと、ちょっと後悔してる。出て行ったら血だらけになったかもしれないけど。

★1971年、中津川フォークジャンボリー。高台の第２サブステージにて。（撮影・佐野史郎）

▼LP『満足できるかな』発売（1971年）

佐野◆新譜が出るたびに、バンドのみんなでいっしょに聴くんですけど、だいたい大笑いしながら聴いてました。『満足できるかな』なんかもそうでしたね。
遠藤◆笑ってもらえるのはいいねー。
佐野◆いまでも松江にある喫茶「MG」では、当時『満足できるかな』が毎日かかっていました。ジャックスはやめちゃうし、岡林（信康）さんはどっかに行っちゃうし、やっぱりはっぴいえんどと遠藤賢司だなと思っていたところに、『満足できるかな』が出たんです。

★松江の喫茶MG30周年記念コンサートでのエンケンさん。1999年夏。

あのなかの「寝図美よこれが太平洋だ」を聴いた時も、この人たちはなんて楽しそうなんだろうなと思いました。『遠藤賢司実況録音大全』に入っている「寝図美よこれが太平洋だ」のはっぴいえんどとのリハーサルにしても、ずっと笑ってるでしょ。おかしいんじゃないかと思うぐらい、ずっと笑ってるんだもん。
遠藤◆まずね、ウクレレを持っていること自体が自分たちでおかしかったの。（笑）
佐野◆ああ、あれは画期的でしたよね。（笑）
遠藤◆ウクレレを持っていることだけで笑っちゃったし、しかも裏声でしょ。はっぴいえんどともはじめてのレコーディングだったし、俺はそうは思ってないけど、他のみんなはこんなの演っていいのかなと思いながら演ってたんじゃないかな。ちょっと違うぞと思ってたんだろうね。
佐野◆本当に楽しそうに演ってたんですよね。
遠藤◆いま聴いても「寝図美よこれが太平洋だ」は楽しいよね。
2004年に網膜剥離の手術をしたときに、「寝図美よこれが太平洋だ」をMDに落としてエンドレスにしておいたんだよ。だから、1時間40分ぐらいの手術が終わって、帰ってきた時にも回ってたんだよね。この曲が流れてれば手術は無事終わるだろうと、そんなふうに思わせる曲なんだよね。葬式のときもこの曲が良いかなと思ってる。（2018年1月31日の渋谷クアトロでの「生誕71年エンケン祭り～～追悼・遠藤賢司」では奇しくも細野晴臣さんが「寝図美よこれが太平洋だ」をギターの弾き語りで唄った）
“青春”という言葉は嫌いなんだけど、「寝図美よこれが太平洋だ」は確かに青春の1ページだなと思う。みんな素直に「あはははは」と生活感も、何のケレン味もなく笑ってる。良い録音だったよね。
金子章平というディレクターが、そういう面白いところを拾ってくれた。普通のディレクターなら「なにやってんだよ」みたいになるところを、ディレクターもいっしょになって笑ってた。
佐野◆「あれ、間違えちゃった」って、間違えたところまで入ってる。（笑）
遠藤◆トラック・ダウンの時にどうしようかという話しになって、この流れは止めない方がいいなってことになった。そこで切ってもはじめて聴いた人には分からないかもしれないけれども、楽しい雰囲気の流れが一回途切れちゃうと、何か違うと思うんだ。だから止めずに「アハハハ、もう一回」ってやったのが、良い結果になったと思う。
佐野◆それは映画監督と同じですね。セリフをちょっと間違えても、全体として良いテイクが撮れたらそれを使います。変な監督だと止めるけど、良い監督はそれを観ていて拾ってくれます。それと全くいっしょですね。
僕ら高校の時のバンドでは「寝図美よこれが太平洋だ」の間違えるところまでコピーしてましたからね。（笑）どちらかというと、技術的なコピーというよりも、笑っちゃったりするようなところばかりコピーしてた。「間違えちゃった」と言うところがやりたかったというか。（笑）
それが高じて、しまいには演奏ではなく会話を録音するようになりました。バンドなのに、演奏しないで会話を録音しては、聞き返して大笑いしてました。アズキが関取の役で、僕がインタビュアーという設定だったり、二人のマラソン・ランナーが走っている設定とかでアドリブの会話を録音して、聞き直して「ここが良かったとか」自己評価してました。その情熱を音楽に注ぎ込めば良かったんですけど。
遠藤◆「寝図美よこれが太平洋だ」は本当に笑えるんだよ。ウチのおふくろは86歳だけど、あの曲だけは大好きだからね。だから、年齢は関係なく、誰にでも通じるんだろうと思う。そういう点でも、良い曲だな。
佐野◆NHKのラジオ番組に呼ばれて、リクエスト曲をと言われたので、エンケンの「夢よ叫べ」をかけてもらったことがあったんです。生放送で落語家の立川志らくさんと話していたら、視聴者から「いまの曲が良かったので、遠藤賢司さんのほかに良い曲があったら教えてください」という質問が来たんですけど、答える時にやっぱり「寝図美よこれが太平洋だ」って言っちゃうんですよね。
遠藤◆同じように曲の途中で笑っちゃうボブ・ディランの「115番目の夢」という曲があって、それを思い出すって「an an」に書かれたことがある。「115番目の夢」は好きだけど、関係ないよと思った。
佐野◆「カレーライス」では、お腹が鳴っちゃってますものね。（笑）
遠藤◆録音スタジオのどこで録ると、曲を作った時と近い環境になるのか、スタジオ中を探していくんだよね。生ギターって、そういうものだと思うんだ。最後には邦楽用の畳を持って来て、その上にあぐらをかいて座ったら、「ああ、これだ」と思えたから録ったの。マイクもお腹の所にあるから、鳴るのが聴こえちゃったんだ。（笑）
佐野◆ヘッドフォンで聴いてると、お腹は鳴ってるし、歌詞は言えてないし。（笑）あのアルバムは、普通だったらNGというものが、プロデューサーによって……
遠藤◆雰囲気が良ければそれでいい、自然な流れが一番いいんだよ。ちょっとぐらい間違ったってね。
佐野◆ギターもいい音で録れてますね。
遠藤◆アコースティック・ギターの音を録るのは難しいね。
佐野◆あの時は何を使ってたんですか？
遠藤◆岡林（信康）さんに10万円で譲ってもらったマーチンのD-35。
『満足できるかな』のころは練習スタジオがないから、はっぴいえんどの連中とポリドールの会議室が開いてるよということになると、そこで練習したりしてたね。

▼LP『嘆きのウクレレ』発売（1972年）

佐野◆僕らが高校2年生の時に『嘆きのウクレレ』が出たんです。
ーー◆「Hello Goodby」でエンケンさんがリード・ギターをお弾きになりましたよね。高校のとき、佐野くんはあのリード・ギターを弾けたんですよ。
遠藤◆うほほほほ、ウソだー！　本当？
ーー◆１回だけなんですけど、コピーとかではなく、いきなりまるっきり同じテンションで弾きはじめたんです。何で弾けるんだって、ビックリしました。出雲弁で言うところのじゃじゃ（めちゃくちゃ）なんで、もう２度と弾けないと思うけど。
遠藤◆ああ、分かる分かる。本気でぶつかってたんだ。
あの時は洪栄龍の持って来たギブソンの335をフェンダーのアンプにつないで、エコーを通してもらって弾いたんだよね。リード・ギターなんか弾いたことないんだけど、弾いたら気持ち良くてさー。（笑）俺のなかではフレーズがどうのとかいう設定は何処にもないから、ガー、フンフンフンフーン、気持ちいーなーって感じだった。だから、たぶんの同じようにして弾いてたんじゃないかな。
佐野◆スケールなんて分からないですからね。
遠藤◆俺も全然分からなかった。
ーー◆エンケンさんのはいままでに聴いたことのないリード・ギターでした。
遠藤◆すごいよね。実は２日前に水戸に帰った時に、一人だったから車のなかで自分の演奏を聴いたの。すげーギターだなーと思った。飛んでるよね。
佐野◆あそこが分かれ目なのよ。『嘆きのウクレレ』と『宇宙防衛軍』というのは踏み絵のようなアルバムだと僕は思うんですよ。「カレーライス」がヒットし、『満足できるかな』でミュージック・マガジンの「日本のロック賞」で１位になり、その後だから好きなことやってるなって感じがありました。ジャケットも変わった紙を使ってたし、まとまるんじゃなくて反って暴れていて。
さっきのリード・ギターにしても、音楽的には間違っているかもしれないけど、（本当の音楽的には正しいんだけど）、いわゆる楽理的には不協和音にもなっていないのかもしれない。でもそこで、「何だよメチャクチャ演って」と怒る思う人と、「こりゃいいや」と笑っちゃうタイプに分かれると思うんです。僕らは大喜びだったし、あのリード・ギターも１回しか出来なかったけど、１回弾ければ良いや。（笑）
ーー◆あれには驚いた。
佐野◆何十年もつき合ってるけど、エカが俺を褒めてくれるのってそれだけだもんな。（笑）
遠藤◆笑ってくれたというのは、カッコ良く言えば「自分のなかの魂の自由をつかみ取る」ということだものね。俺といっしょだーって、魂をつかみ取って、連れてってくれるということだよね。
佐野◆解放されるんですよね。
遠藤◆真面目なことを言えば、俺は人を笑わせるのって一番難しいことだと思ってるんだ。だから、笑ってくれたというのは嬉しいよね。
佐野◆僕らは、しょっちゅう笑ってました。
遠藤◆もうひとつには、「なんだこりゃ。全然音楽じゃないじゃない」っていう笑いもあるじゃない。俺は絵を描いているつもりだったの。ギターというキャンバスに両手の絵筆でりゃーって描くんだと思った。それをつかめないで、ハナからポンと捨てちゃう人もいるだろうね。絵でも、小説でも映画でも何でもそうだけど、そういう見方をする奴はいるじゃない。普通が好きで「普通じゃないじゃない」とか否定的に言う奴。理路整然とした既成概念のなかにいる奴。俺たちはそんなの嫌いじゃない。でも、踏み外せばカッコ良い、自由にやっていればカッコ良いというわけでもないんだよね。どこかにその人に絵柄がきちっとないとダメなんだ。
佐野◆決められた器がないから、そこを見分けたり聴き分けたりするのは難しいですね。
遠藤◆演る方もそうだよ。
佐野◆だから、間違っちゃうこともあります。僕も観たり、聴いたりしたことで、「あっ、いいな」と思っても、「あれっ、本当に良かったのかな？」「いやいや、分からなくなっちゃった」ということもあります。でも「Hello Goodby」では迷う必要もないわけですよ。
遠藤◆それは最高の褒め言葉だよね。俺も、他の人がそう思ってくれるために演ってるから、最高だよね。
佐野◆「プンプンプン」と「Hello Goodby」はすごいですよ。それにバランスをとって「猫と僕と君」とか入っていると『満足できるかな』のファンを裏切らないやさしさがありますね。
遠藤◆俺もいろんな要素を持っているからね。その両極端が強すぎるから、俺に対する好き嫌いがはっきりするんだろうね。昔は「カレーライス」が好きな人と「満足できるかな」が好きな人でパッと分かれたからね。俺は「カレーライス」だけ演ってると厭きちゃうから「満足できるかな」も演るし、「Hello Goodby」も演って「猫と僕と君」も演るし。『嘆きのウクレレ』には「歓びの歌」も入っているぐらいだから、いろんなことやってやろうと思ってるんだ。どちらかひとつをやっていれば、認められやすいんだと思うんだ。売れるということを考えたらね。どちらか一方しか聴いていない人は、反対側を聴くとビックリしちゃうんだよね。
佐野◆「プンプンプン」には頭脳警察のトシさんといっしょでしたね。
遠藤◆「プンプンプン」で、トシと演りたいと思って、来てもらった。
佐野◆それはいきなりスタジオだったんですか？　ライヴで演ったりはしてなかった。
遠藤◆そうじゃないね。練習もしてないと思う。（笑）スタジオに行って、「こんな感じで」「あいよー」って、ドンドンドンといきなりはじまっちゃうような感じだった。昔は練習スタジオってなかったでしょ。覚えているのはアカボシ・スタジオとか、道玄坂のヤマハのスタジオも出来たばかりだったし。

▼LP『歓喜の歌　遠藤賢司リサイタル』発売（1973年）

佐野◆1970年に『niyago』『はっぴいえんど』、71年に『満足できるかな』『風街ろまん』、72年に『嘆きのウクレレ』、73年に『HAPPY END』と高校の３年は毎年出る遠藤賢司とはっぴいえんどが楽しみだったんです。
そのあとが神田共立講堂でのライヴ『歓喜の歌　遠藤賢司リサイタル』（1973年）ですね。
遠藤◆キャラメル・ママ（細野晴臣、鈴木茂、松任谷正隆、林立夫）やスティール・ギターの駒沢裕城くんとかがいっしょだった。
佐野◆これがライヴ盤なのにめちゃくちゃ演奏が良かったんですよ。
遠藤◆猫の寝図美まで連れて行った。（笑）
佐野◆井上陽水さんも出たんですよね。
遠藤◆陽水が俺のマンションンに引っ越して来て、2階と3階だったんだよね。同じポリドールだったからなのかなー？　それで「明日コンサートがあるんですよね。俺もやりたいんですけど」って言うんだよ。前の晩にだよ。（笑）俺も「いまから練習するの、大変じゃない？」と思ったんだけど、「ああ、そう？」って練習して出たんだよ。でも、けっこう器用に出来たんだよ。もしかしたら、練習して来たのかもしれない。
佐野◆ああ、確信犯だ。
遠藤◆いやいや、それは分からないよ。（笑）
あのコンサートではマネージャーのあさひるりおに足踏みをしてもらった。
佐野◆エンケンってライヴになると小節数とか好き勝手じゃないですか。それがキャラメル・ママみたいなキチっとした人たちとパチっと合うのは何故なんですか？　細野さんも前から変な人だなと思ってるんですけど、はっぴいえんどのときもキチっとしているようで変な小節数で切ったり、自由なんですよね。キチっとしているように聴こえるけど、弾きたいように作ってるのがあとになって分かるんです。
遠藤◆やっぱりやりたいこととか、嗜好性がいっしょなんじゃない。はっぴいえんどもそうだけど、曲のなかで変に政治的なことは言わないじゃない。ちゃんと自分のことを唄っているということではいっしょなんだろうね。出発点がそこだからかもしれない。世間を巻き込んで哲学をぶち込んでやろうというようなところはないからね。自分のために音楽をやろうというところがいっしょなのかもしれない。
それは大学１年の時に、細野くんと大根もって学生服で出会った時からそうなのかもしれないね。（笑）

▼青山タワーホール「遠藤賢司リサイタル」（1974年）

佐野◆1974年に東京に出て、4月に青山タワーホールでの「遠藤賢司リサイタル」に行きました。その時のポスターはいまでも持ってます。この年は二日公演だったので二度とも行きました。
神田共立講堂でのライヴ『歓喜の歌　遠藤賢司リサイタル』を聴き込んでいるから、また大掛かりなのかなとか、二日間だしいろいろ想像を膨らませるわけです。またバックはキャラメル・ママなのかなとか、並んでると知らない人同士で話してました。
ソファーとかアップライト・ピアノとか、家の家具を全部ステージに持って来たというような話しをしていましたよね。
遠藤◆高久光雄さんたちが作ったキティ・レコードのブルーのカーペットを借りて来て、これは宇宙だって言って下に敷いたんだよ。そこにアンティークの家具を乗せて、魔法瓶を置いて。
佐野◆すごくリラックスしてましたね。マネージャーのあさひるりおさんが出て来て紹介されたのを覚えてます。この年の二日間はエンケン独りだけだったけど、ミラーボールを回したり、花吹雪をまき散らしたり、「ほんとだよ」みたいな怖い系のエンケンじゃなくて、ああいうエンケンを見たのははじめてだった。本当は初日だけのつもりだったんですけど、ああ、これは明日も行こうって、二日間行きました。
遠藤◆ミラーボールは良かったよね。トレモロアームをつけたグレッチをはじめて披露したんじゃないかな。
佐野◆そんなことを言ってました。
遠藤◆ものすごく良い音だったんだけど、トレモロアームを後からつけたから、ネックが曲がって来ちゃって、アームは外したんだ。
佐野◆あのライヴは良かったですね。
遠藤◆そうすると中津川以降はじめて観たのかな。
佐野◆そうそう。

▼渋谷に紅茶とカレーの店「ワルツ」開店（1974年）

遠藤◆1974年に渋谷の道玄坂に「ワルツ」というお店を開店したんだけど、佐野くんは「ワルツ」の第一号のお客さんなんだよね。これは画期的なことだよ。（笑）
佐野◆この話しは是非入れておいてほしいですね。やっぱり人生はいろいろあるんです。（笑）
遠藤◆全身白ずくめの男が、スケッチブックを片手に階段をコツコツコツと上って来たんだよね。
佐野◆まあ、白ずくめじゃないんだけどね。（笑）帽子はかぶってたけど。
遠藤◆もう、そういうイメージなんだよ。
佐野◆開店は2時なのに、お客さんは誰もいなかった。こっちは長蛇の列だろうと思って行ったのに。
遠藤◆前の日にオープニング・パーティをしてくたくたになっているところに、「誰か来たぞー」みたいな。（笑）
佐野◆ガラス張りのおしゃれなお店でしたね。階段を上がって行くと自動扉があって。
遠藤◆自動扉にはUFOの絵が描いてあって、UFOが出たり入ったりしてた。
佐野◆アンティークの家具があって、アップライトのピアノも置いてありました。ベスト盤のピアノを弾いている写真は「ワルツ」で撮ったんですよね。
遠藤◆そうそう。
佐野◆ピアノの上には「KENJI」というネオン管があって。窓辺に大きなテーブルがあったので、そこによく座ってました。
遠藤◆最初もそこに座ったよね。
佐野◆オープンはいつぐらいでしたっけ？
遠藤◆そんなに暑くないころだと思うよ。なにせ佐野くんは白ずくめだったから。（笑）
佐野◆白じゃないと思うけど。（笑）
遠藤◆あのコツコツコツという足音はよく覚えてるよ。アイビーっぽい格好をしてなかった？
佐野◆違うんじゃないかなー？
遠藤◆帽子は白かった？
佐野◆グレーです。
遠藤◆じゃあ、それが白っぽく見えたのかもしれない。
佐野◆サディスティック・ミカ・バンドが『黒船』を出したころで、ベースの小原礼さんがかぶっていた帽子が格好良くて、原宿のDOMONで買ったんです。（笑）
そして、注文したのはもちろんミルクティー。
遠藤◆それも覚えてる。
佐野◆そしたら、エンケンが奥から出て来て、「これでも読んだら」って「billboard」誌を渡してくれた。でも、英語だからなー。（笑）
遠藤◆そういうのが好きそうに見えたんだよね。

▼LP『KENJI』発売（1974年）

佐野◆『KENJI』はジャケットも横尾忠則さんでカッコ良かったし、踏み絵のような『嘆きのウクレレ』の危うさとおかしさとは正反対の、カチっとしたものすごくよく出来たアルバムですね。
なかでも「星空のワルツ」がものすごく良くて、あれを聴きながら毎日泣いてたんだよね。（笑）東京で出て来て一人だったから、ヘッドフォンして聴いてると泣いちゃうんだよね。
このころから、シェイクスピア・シアターで芝居の稽古がはじまったので、あまりライヴとか行く暇がなくなりました。
遠藤◆他にはどんなライヴに行ってたの？
佐野◆ニッティー・グリッティー・ダート・バンドとか。
遠藤◆えっ、厚生年金ホール？
佐野◆そうです。
遠藤◆じゃあ、俺も観たよ。
佐野◆最後に「クレメンティ！」って叫んだら、本当にバンジョーひとつで、「クレメンティ」を演ってくれました。
遠藤◆同じ日に観ているかもしれないね。
佐野◆あとは同じ厚生年金ホールでサディスティック・ミカ．バンドを観ました。『黒船』が出たばかりでしたね。前座はビートルズのコピーバンドのバッド・ボーイズでした。
遠藤◆ああ、いたね。
佐野◆けっこう笑ったんだけど。それから、青山タワーホールの「遠藤賢司リサイタル」の2デイズぐらいじゃないかな。
遠藤◆はっぴいえんどはもう解散してた？
佐野◆してました。だから、渋谷のジァン・ジァンで荒井由実とかシュガー・ベイブとか観てました。
遠藤◆ジァン・ジァンで観たというのはいいね。
佐野◆シュガー・ベイブもお客さんが30人ぐらいしか入ってなかったんじゃないかな。
遠藤◆それはいい時に観たね。俺はシュガー・ベイブを生で観たことないかもしれない。
佐野◆ユーミンはちょうど『ミスリム』が出たときだったと思います。レコードはバックがキャラメル・ママでしたけど、ライヴのバックはダディー・オーというバンドが演ってたんです。それが『HARD FOLK KENJI』バックを務めた平野融と平野肇の平野兄弟なんです。聴いていてベースとドラムが格好良かったんですよ。ダディ・オーはあとエレピが後に山下達郎のライブにも参加していた吉原真紀子さんと、ギターは元DEWの大野久雄さん。
ユーミンは「次のアルバムはこのメンバーで作ります」ってMCで言ったんですけど、『コバルト・アワー』では結局「ルージュの伝言」「何もきかないで」の2曲だけでしたね。
このころ、ジァン・ジァン以外でそんなにライヴハウスがなかったんですよ。
遠藤◆渋谷のB.Y.Gも毎日ライヴをやっているわけでもなかったね。

▼LP『HARD FOLK KENJI』発売（1975年）

佐野◆『HARD FOLK KENJI』を買って帰った日のことはよく覚えてます。ちょうどアズキ（小豆沢茂）が遊びに来ていて、とにかく二人で大笑い。一曲目に針を落としたら、二人とも後ろにひっくり返りましたからね。
「拓郎がなんだ、陽水がなんだ」っていうところに、バックの平野兄弟（平野融、平野肇）がガーンとくる。腹がよじれるほど笑いました。
これも毎日聴いていて、特に「遠い汽笛」が好きでした。吉田拓郎がアレンジしたという。
遠藤◆アレンジはしてないよ。拓郎がCBSソニーから抜ける時に、そこに遠藤賢司が来て、ディレクターも同じ人だったのね。それで一曲拓郎がプロデュースした曲を入れようということになったんだけど、途中で喧嘩になっちゃった。（笑）アレンジとか、拓郎が連れて来たミュージシャンもちょっと違うんだよね。
最終的には、ワルツの解釈でモメて、拓郎のプロデュースはなくなった。ちょっとした違いだと思うんだけど、いまでも違いが分からないんだ。
佐野◆『HARD FOLK KENJI』を聴き込んでいたので、高円寺の次郎吉に観に行ったんですよ。そしたら、ずっとリハーサルをしていて、なかなか入れてもらえなかったんです。
その時に「遠い汽笛」も演ってくれたんですが、レコードと全然違うもので、その時に吉田拓郎とのいきさつを話していたような気がします。
遠藤◆拓郎のアレンジのやり方と、俺のアレンジのやり方が違うということを言ったのかもしれないね。
佐野◆ハード・フォークという言葉を聞いた時に、もうジャンルとかじゃないんだということは意識しました。良い言葉だなと思いました。ハード・ロックがあってハード・フォークがない方がおかしいぐらいに感じました。
遠藤◆唄いだした時から、生ギターを持っているからフォークだとか、エレキ・ギターを持っているからロックだとか分けるのって、何でだろう、変だなと思ってたんだよね。音楽として聴けばいいのに。
遠藤賢司の音楽を表現するのに、何か面白い、分かりやすい言葉がないかなと思ったの。今は純音楽と言っていて、これはちょっと分かりづらいかもしれないけど、ハード・フォークは分かりやすいんじゃないかな。
「カレーライス」を聴いていた人が、ハード・フォークと聞いた時に「ああ、遠藤賢司には『満足できるかな』みたいな激しいところもあるからな」と思ったら分かりやすいかなと思ったんだよね。
佐野◆『HARD FOLK KENJI』では3コードの「ゴー・ゴー・ケンジ」も好きでした。

▼渋谷明治通り沿いに「ワルツ」新装開店（1977年）

佐野◆芝居で忙しくなったから、このころライヴはあんまり行ってないんですけど、明治通りに引っ越した「ワルツ」には、ピラミッド・カレーを食べに行ってました。ライヴを観にも行きましたけど、キョウジ（山本恭司）が1980年（7月20日）に出ているのを知らなかったんですよ。キョウジも出るなら言ってくれればいいのに。
遠藤◆還暦記念パーティー（2007年1月13日）でキョウジくんに「あの時の『東京ワッショイ』面白かったですね」と言われて、「あっ、いや、そういえば演ったな」って思い出した。俺、忘れてたんだよね。（笑）
佐野◆ヒデー。（笑）
遠藤◆その時、キョウジくんには「あっ、あの時はありがとう」って言ったんだけど、すっかり忘れてた。
佐野◆なんでキョウジといっしょに演ったんですか？
遠藤◆もうBOW WOWはやってたでしょ。
佐野◆しかも、BOW WOWをはじめてからずいぶん経ってますよ。あのころ、エンケンはユーラーア・ヒープの『対自核』の話しとか、レイジーとか好きだったでしょ。
遠藤◆ははは、レイジーは男だけのファンクラブの会長をやってたから。（笑）
佐野◆推測するに、その流れじゃないかな。キョウベエはギターの高崎晃の兄貴分ですからね。キョウジの方が俺よりも先にエンケンと知り合ってるんだよね。これがちょっと許せないところだな。（笑）
遠藤◆もしかしたら、俺から「やってくれない」って電話したのかもしれない。
佐野◆エンケンって、四人囃子ともいっしょに演ってるし、ハード・ロックも好きですよね。
遠藤◆もしかしたら、ハード・ロックの方が好きだね。俺はいわゆるフォークとか好きじゃないよ。ウッディ・ガスリーとか、昔のウエスタンのキチッとやっている人は好きだけど。でも、向こうの人が好きだって言うなら分かるけど、日本人がいいというような曲じゃないよなとか、向こうの人の振りして聴いてるような感じがするのは好きじゃないな。アメリカではこんなのがいいんだよ、とかいうのは嫌い。
そういうのよりは、ヘビメタとかハード・ロックの方が気持ちいいし、好きだよ。演ってる奴がいいから。
佐野◆それこそ、笑えるぐらい。そこまでやらなくてもっていうのが多いよね。（笑）
遠藤◆いい奴だなーって思える方がいいよね。そういう奴の方が、話してもいろんなことを知ってると思う。「そうだよね」っていう部分が絶対にあるんだよね。話したわけじゃないけど、そういったところが、絵柄になって出て来てる。
偉ぶったり、通ぶったりしてる奴よりも、シャカリキになってやってる奴の方が好きだもん。
佐野◆ヴィジュアル系の人たちと練習スタジオでいっしょになると、細かいところを気にして、靴のちょっとした汚れを磨いてたり、ずっと爪を気にしてたり、弦の巻き方でもチマチマしてるっていう印象なんです。
遠藤◆音が良ければいいけどね。でも、そのチマチマした努力は買いたいけどね。（笑）
キッスとかその最たるものじゃない。俺はキッスの初来日（1977年）も観に行ってるからね。
佐野◆前座はBOW WOWだったと思いますよ。
遠藤◆あれっ、じゃあ俺は遅れて行ったのかな？（1978年のキッス２度目の来日公演の前座がBOW WOW）
キッスって派手な格好だけだと馬鹿にする人は馬鹿にするけど、あの努力はすごいよ。あの絵柄を表現するってすごいことだよ。カッコいいよね。
ジーン・シモンズは映画の『未来警察』（1984年）で俳優をやったよね。よかったよ。ニューヨーク・ドールズのデヴィッド・ヨハンソンも映画に出たよね。
✳︎エンケンさんと一緒にやったきっかけを作ってくれたのは江蔵浩一という元ピンナップスのギタリストなんだ。彼とは彼がまだアイドルバンドにいた頃から一応知り合いだったんだけど、なぜか突然話がかかってきて「遠藤賢司さんのLIVEでギター弾いてくれない？」と言われ宇宙防衛軍のカセットを送ってもらったような・・・
なのでそれがエンケンさんからのアイデアだったのか浩一からのアイデアだったのかは定かではないな～。
カセットを聴いてしばらくは、僕がいろんなところで「通っ！！」（通好みロック）と叫んでいたらしいよ・・・。（山本恭司）
遠藤賢司さんとの思い出 http://www.kyoji-yamamoto.com/posts/3149670?categoryIds=432419

▼LP『東京ワッショイ』発売（1979年）

遠藤◆『東京ワッショイ』を出したら、すぐに頭脳警察のパンタから電話があって「これから行くから」って、黒ずくめの格好でオートバイで走って来たの。「よく言ってくれた。俺もこれが言いたかったんだよ」って。もしかしたら、そのときはじめてちゃんと話したのかもしれない。もちろん、電話番号もウチも知ってたから、会ってはいるんだろうけど。
佐野◆『東京ワッショイ』のころは近田春夫＆ハルヲフォンの『電撃的東京』（1978）や近田さんの『天然の美』（1979）とか、パンタさんの『マラッカ』（1979）とか『パンタ＆ハル/1980X』（1980）など良いアルバムがたくさん出てましたね。
遠藤◆パンタが何でもいいからいっしょに演りたいって言うから、「ワルツ」でいっしょに演ったことがあった（1979年 3月31日）。じゃあ、「哀愁の東京タワー」の平山三紀の役をやってくれといったら、「いいよ、なんでもやるから」ってほっかむりして「哀愁の」ってパンタが裏声で唄ったら、パンタの子供がちっちゃかったんだけど観に来てて、「とーちゃん」って叫んだんだよね。（笑）
佐野◆あはははは。
遠藤◆そのテープが残ってて、「とーちゃん」ってすごくかわいいんだよ。
佐野◆いい話しだな。（笑）
遠藤◆それもあって、パンタには「エンケンと演って、いままでにいい思い出がない」ってずっと言われるんだ。（笑）「これからはパンタ孝行するから、ごめんね」って言うんだけどね。
佐野◆『東京ワッショイ』のころは国立でエカ（小川功）とメガネ（周藤芳行）といっしょに住んでたので、毎朝起きると、まず『東京ワッショイ』をかけて元気を出してました。
遠藤◆喧嘩なんかしなかった？
佐野◆喧嘩はしたことがないですね。楽しかったですね。メガネは半年ぐらい引きこもりで、分厚いカーテンを閉め切って、全然部屋から出てこなかったけど。（笑）
遠藤◆ガス代なんかは三等分するの？
佐野◆アズキ（小豆沢茂）が空焚きで風呂釜を壊して、その修理代をエカがずっと払ってたな。（笑）キョウジたちも米軍ハウスに住んだり、細野さんたちも狭山のアメリカ村で『HOSONO HOUSE』録ったりしてたから、いっしょに住んで音楽をやるというのは楽しかったですね。嶋田（久作）もアズキもよく来たし、キョウベエも遊びに来てました。
遠藤◆女の取り合いとかはなかったの。
佐野◆それもなかったですね。女子高校生とか、女の子も遊びに来てましたけど。
遠藤◆なんにもなかった？
佐野◆特にはないですね。健全なものですよ。
遠藤◆そこを一番聴きたいんだけどな。（笑）けっこう、なさそうだよね。
佐野◆どうしてるかな、あの娘は？　というのはあるけど。
ーー◆ああ、あったね。今思い出しまた。そういえば、ありました。（笑）
佐野◆ねっ、元気かな？

★当時の佐野。アルバイトもしていた高田馬場のジャズ喫茶マイルストーンにて。右がアズキ（小豆沢茂）

▼渋谷TAKE OFF 7ライヴ（1983年）

遠藤◆1983年に渋谷のTAKE OFF 7でライヴをやっていた時に来てくれたんだよね。
佐野◆状況劇場時代に、のちにカミさんになる石川真希といっしょに渋谷でチラシ撒きをしていて、TAKE OFF 7の横を通ったら“遠藤賢司”と書いてあったから、久しぶりだなと思って行ったんですね。1980年に状況劇場に入ってからはライヴに行ってなかったんです。
遠藤◆俺もコンサートはあんまりやってなかったと思うよ。
佐野◆その前は明治通りの「ワルツ」で観たのが最後だったのかもしれない。［ワルツは1980年いっぱいで閉店］『宇宙防衛軍』（1980年）から何年か経っているから久しぶりだと思ったんでしょうね。あのころTAKE OFF 7では毎月ライヴがあったから、よく通ってました。
遠藤◆手紙をくれたんだよね。
佐野◆そうそう、状況劇場の『住み込みの女』（1983年）の公演の招待券を入れておいたら、本当に観に来てくれたんです。
遠藤◆新宿の十二社熊野神社に行ったら「なんとかはこちらですー」と大きな声の女の人がいたんだけど、それがマキちゃんだった。でっかい声の人だなーと思った。（笑）
佐野◆僕らは飴屋法水とかと「遠藤賢司が来たー」って、楽屋裏で大騒ぎしてました。
遠藤◆佐野くんの顔を知らないから、舞台を観ていてでっかい顔の奴がいるなー、貼付け人形みたいだなーって思ってたんだよね。あの人じゃないと良いなーと思ってたら、その人だった。（笑）
佐野◆残念でした。（笑）芝居も絶不調のころだったし。
遠藤◆最後に誰かがクレーン車で振り回されたんだよね。
佐野◆そうそう。清水紘治さんが客演で回されてました。
その翌月にTAKE OFF 7に行ったら、打ち上げにも誘ってもらえるようになりました。祭りばやしによく行きましたね。
遠藤◆うはははは、祭りばやし。（笑）
佐野◆そこで、14歳の頃からの思いの丈をずーっと話し続けました。（笑）高校の時はエンケンの曲をコピーしていたとか。

★エンケン＆タイムスリップ。左から石川真希、遠藤賢司、佐野史郎、嶋田久作。夢野ワンダはエンケンさんの後ろかな？
1984年、渋谷TAKE OFF7にて。

★1984年、渋谷TAKE OFF7。エンケン＆タイムスリップ。バックのギターは佐野。

★左から嶋田久作、夢野ワンダ、エンケン、石川真希。佐野も座ってギター弾いてるはず。

★渋谷TAKE OFF7のエンケンさん。

★タイムスリップ＆エンケン。左から石川真希、夢野ワンダ、エンケンさん。

★1984年、吉祥寺シルバーエレファント。奥に佐野、エンケンさん、夢野ワンダ、嶋田久作。

★MC中のエンケンさん。

★エンケン＆タイムスリップ。左から夢野、エンケンさん、マキ、嶋田。
1985年4月21日、渋谷丸井の屋上にてオープニング記念ライブ。右端に水玉消防団・・・

★嶋田、夢野、エンケンさん、佐野。

▼佐野史郎・映画主演デビュー『夢みるように眠りたい』（1986年）

佐野史郎公式サイト「橘井堂」以前の公式サイト「Loverinthos」の「映画主演デビュー『夢みるように眠りたい』」（1998年2月6日）より再録。

★1985年2月、「夢みるように眠りたい」撮影スナップ。背後に雑貨屋のじいさん役のエンケン!!

★じいさん役、楽しそう^^社会の窓からシャツが出てるのがこだわり!?どこの小学校かは忘れたけど、浅草の方かな？この近くの家屋を借りて撮影してました。

★大久保、グローブ座のコンサートの打ち上げ。対バンのエンケンさん、早川義夫さん、あがた森魚さん!!2000年10月5日!!

友達の嶋田（久作）くんも映画デビューが『帝都物語』で主役だったし、佐野くんもはじめての映画『夢みるように眠りたい』が主演だというところがすごいよね。

佐野◆『夢みるように……』に出演するまでの経緯なんだけど、1984年の8月に状況劇場を逃げ出して（81年にも辛くなり、友人の小豆沢くんの高円寺のアパートに身を寄せる第一回逃亡を企てたんだけど、マキや飴屋法水氏と同期で1年先輩のヨシコが呼びに来て逃亡は１日で終わった）、西荻の周藤兄弟（周藤芳行。松江南高校の同級生で高校の時からのバンド仲間、ドラムス担当。弟のアキタカは嶋田久作脱退後のタイムスリップのベーシストとして参加）のところに身を隠したわけだ。
劇団にも手紙を出して（手紙を最初に読んだのは李麗仙さんだったという）正式に辞めて、何をしていたかというと、バンドをやってたんだ（タイムスリップ）。それで、エンケン（遠藤賢司）さんに気に入ってもらってバックを手伝ったりしてるうちに、エンケンさんとあがた森魚さんとのジョイントのライブがあって、あがたさんのスタッフをしていた林海象氏と出会ったんだ。

そのころ、あがたさんが映画を撮るという話があって、嶋田くんや飴屋（法水）くんも出るというような話になってたような気がする。

佐野◆そうなんだよ。結局嶋田もアメちゃんも東京グランギニョルの旗揚げで参加できなかったんだけど、その映画のカメラテストを、四谷三丁目の喫茶店の二階で（英語で台詞をしゃべるテスト）受けたんだ。しかし、それがなかなかうまくいかないんだよ。ところが、あがたさんがやるとすごく上手くて、やっぱり芸能のプロは違うなーって思ったりしてたよね。（笑）
それで日を改めてあがたさんの次のカメラテストが終わった日に、海象くんが「これ、ちょっとやってみて下さい」って出してきた台本が『夢みるように眠りたい』だったんだよ。つまり、あがたさんの映画はポシャッて海象氏のが残ったわけ。
シェイクスピア・シアター、状況劇場と10年劇団にいて、唐（十郎）さんにも「そんな演技してたら映像じゃ通用しないぞ」と言われて、役者として舞台はもうダメだと思っていたし、だったら「映像で通用する演技ってどういうものだろう？」と思い始めて、古い日本映画をたくさん観まくって、それでそのころは小津安二郎に入れ込んでたから、大きな声を出さなくても、普段話してるように喋って、丁寧に作って、ちゃんと思ってれば成立するような、映画をやってみたいと思ってたんだよね。
大声を張り上げてた紅テントでの自分の演技の嘘臭さや居心地の悪さみたいなものあって、そんな時にアパートに帰ってアコースティックギターでエンケンの曲を弾いてみたり、タイムスリップで嶋田なんかと小さな音のロックバンドにしようって話したりしてたのも、すべてが『夢みるように眠りたい』のような、静かだけど熱い魂のあるようなものに向かっていたんじゃないかな。ちっちゃなことがやってみたいという、本当に素直な、邪心のない、いい人のころだったから、この映画をやってみたいなーと素直に思えたんだよね。
林海象監督も人生をかけた無心の状態だったろうし、エンケンさんとあがたさんが引きあわせてくれた本当に運命的な出会いだった。

この映画のスタッフはそうそうたる人たちが集まったんだよね。　

佐野◆美術が木村威夫さん、撮影が長田勇一さん、照明が長田達也さん。超一流の映画屋さんたちが集まった。突撃してみなさんを口説いたという。直接はもちろん会えなかったけど原節子さんにも出演交渉して、もちろん断られたんだけど、後で「いい作品になるよう頑張ってください」と伝言があったらしい。すごいよね。林海象監督のヴァイタリティーは本当にすごかったな。ギャラもなくてみんな手弁当に近かったけど、その情熱に引き寄せられて夢中だったね。でも、映画が公開されてヒットし、ヴェネチア映画祭に招待された時にはギャラもらったよ。みんなじゃなかったかもしれないけど、一応、主演なんで（笑）そういうとこはちゃんとしてたね。
それで、85年の年が明けてからは、もう殺陣の稽古をはじめてたね。2月になってすぐクランクインしたんだけど、最初のチャンバラのシーンが始め上手くいかなくてね、海象は「もうこれで俺の人生も終わりだ」と思ったらしいよ。けど、そこはアングラ出身、本番は気合入りましたよ。ほとんどロケなんだけど、大駱駝館の豊玉の倉庫にはセットも組んで、撮影をしたな。

DVDも廃盤になってるけど、興味のある人は是非観て下さい。

佐野◆あがたさんやエンケンさんも出てるから音楽ファンも観に来てくれただろうし、モノクロのサイレント映画だったこと、インディーズの映画を西武のような大手が配給するということでも、目新しかったんじゃないかな。それに、シネセゾン渋谷のこけら落としだったこともあって、かなり宣伝してたから、ずいぶん人も入ったんだよね。

おかげでヴェネチア映画祭にまで行けたと。

佐野◆ヴェネチア映画祭には黒澤明などの日本映画の巨匠たちを世界に紹介した川喜田かしこさんや、娘さんの川喜田和子さん、フランス映画社の柴田駿さん、映画評論家の田中千世子さんら、錚々たるメンバーと一緒に参加させてもらった。川喜田さんたちが『夢みるように眠りたい』を気に入ってくださったことは大きかったね。
いまでこそ、たけしさんがグランプリまで取るとさすがに大々的に報道されるけど、『夢みる……』のことは全く報道されなかったね。メイン会場でオールスタンディングで拍手がなり止まなくて、海外の映画祭では途中退場する人ってほんとに多いんだけど、ほとんど人も帰らなかったし、ものすごい反響でね。イタリアのおばあさんのお客さんとか「若い頃に観た映画を思い出した」って言って泣いてるし、急遽、記者会見が開かれて。フランスのル・モンドの取材受けたり。だけど日本で無名の主役の映画じゃ報道されるわけもなかったんだよね。

佐野くんも海象監督も、『夢みるように眠りたい』があったからこそ、いまの状況があるようなものだよね。

佐野◆もちろん！だけどやっぱり、すべてはエンケンだよ。海象監督との出会いのきっかけもそうだけど、表現に対する純粋な姿勢を教えてくれたのは、やっぱりエンケンなんだ。（原）マスミくんにしても、みんなルーツはエンケンなんだよね。すべては、そこに繋がってるんだ。

佐野くんも参加しているトリビュート・アルバム（『プログレマン』）を聴くと、あらためてエンケンさんの作る楽曲の良さが分かった。撮影をしていて舞台と違った、手応えみたいなものはあったの？

佐野◆最後のカットを撮り終わったときには、芝居の千秋楽みたいな感覚もあって、寂しさと充実感とがないまぜになったような手応えを感じたね。ラッシュも観てたんだけど、特に仁丹塔を登っていくところなんか、ドイツ表現主義みたいじゃない。ああいうのが面白くて仕様がなかったな。
あれ以来、海象監督の映画にはほとんど出てるけど、僕の役所はいつも監督の分身みたいな役のようだね。

その海象監督が冬彦のころ「佐野史郎をはげます会」で「この男にだけは、騙されないで下さい」とスピーチしたときに、ああ、長年付きあうとみんな同じことを思うんだなということが分かった。（笑）すごい、同感だったな。

佐野◆あははは、嘘つきで。（笑）でも、最初から嘘つきだとは言われてたけどな。（笑）でも、悪気はないのよー。エンケンさんから何を学んでたことやら。（笑）

★水戸、水戸光圀像の前でエンケンさんがパーソナリティーを務めていた茨城放送のラジオ番組「エンケンとカナ（藤田加奈子アナ）のTHE Weekend」の屋外演奏収録だったような記憶が・・・。

★ラジオのリスナー達に呼びかけて一緒に演奏してたんじゃなかったかな？

★エンケンさん39歳、佐野、31歳。

▼TBSテレビ『ずっとあなたが好きだった』（1992年）

遠藤◆佐野くんが『ずっとあなたが好きだった』で冬彦をやった時も笑ったなー。
佐野◆あれは僕もやりながら笑ってましたからね。
遠藤◆ただ、笑って観てる人ってなかなかいないと思うんだよ。気持ち悪いって退いちゃう人が多いと思う。
佐野◆賀来千香子さんも布施博さんも、野際陽子さんも、笑いをこらえながらやっているところがありましたね。撮影しているのはめちゃくちゃにいじめていたりするシーンなのに、「カット」がかかった途端にみんな「ギャハハー」って笑い出すようなところがありました。あんなことって、もうなかなかないですね。
遠藤◆「満足できるかな」の歌詞のなかで、ギーコラギーコラと首を切るんだけど、あれも笑っちゃうんだよね。最近のライヴでは鈴木茂くんといっしょに演っているから、最後に首がポロっと落ちてコロンと転がる音を出してほしい、首の筋一本のこして、最後にその一本切る音を出してほしいとかいろいろ頼むんだよね。そうすると最後には「うははっ」って鈴木くんも笑っちゃうんだよ。たぶん、それといっしょだと思うんだ。
佐野◆そうですね。
遠藤◆そのギリギリの現実を描くのが一番難しいと思ってる。
佐野◆そうやって笑ってくれる共演者やギタリストなら良いけど、『ずっとあなたが好きだった』では不謹慎だとかいろいろ言われましたよ。ワイドショーでも取り上げられたし、時々は「あんなもの放送していいのか」と言う人もいましたね。そういう人がいなきゃ、またおかしいのかもしれないですけど。
遠藤◆いてもいいけどね。俺の音楽もそうだと思うよ。笑ってくれる人や、認めてくれる人（認めてくれるという言い方は、ずるいと思う。俺が認めさせなくちゃいけないことだからね）とダメな人に分かれるよね。冬彦の評価も分かれたように、俺も好き嫌いがパッと分かれるからね。だから、多数の人が買おうと思うようなレコードは、俺にはずっと出来ないだろうなと思ってる。
佐野◆それは分からないけれど。
遠藤◆でも、NHKの紅白歌合戦に出て、俺もいるんだよ、こういう奴もいるんだよというところを見せたいんだよね。いまの紅白はひどいからね。死んでいるような音楽ばっかりじゃない。ヌードだのどうのっどうでもいいじゃない。それよりも音楽をちゃんとやってくれよ。
このあいだコマ劇場で小林旭を観て来たんだけど、すごいよ。阿久悠が作詞した「あれから」という曲があって、内容は友情をテーマにしていてちょっとクサいんだけど、「昨日、今日と同じ夢を見た」というんだよね。「これからの二人に乾杯」というような歌詞なんだけど、涙が出たね。当日券で前から10番目の席でちょっと高かったんだけど、こんな機会はなかなかないだろうと思ったから観たんだ。
鼻歌を唄うような高い声だけど、魂で唄っているからね。小林旭は天才かもしれない。ああいう人が、どんどん紅白に出てほしいよね。いまはプロダクションの都合だけだったりするでしょ。
テレビ番組もひどいよね。民放って変だよ。あおってあおってなかなか番組がはじまらなかったり、詐欺問題を暴くようなことばかりしているくせに、自分たちもウソをついてたりするでしょ。「こういうウソはよくありません、子供に悪い影響があります」と言いながら、自分たちは「この後すぐ試合が始まります」って何時間も待たせたりする。そう考えるとNHKの方がまともで良いと思うよ。それもあって紅白には出たいな。
佐野◆来年？　曲は何ですかね。
遠藤◆「夢よ叫べ」。
比率として、お前みたいな奴もいるんだと思ってくれる人は増えてるよ。前は無視していた人でも、「君、いつから会得したの」って言った人もいる。音楽として聴けるようになったんだと思う。反体制でないと音楽ではないと思っているような人が、いまだにいるんだよね。それが本物のロックだと思っているような人が。俺にとってみれば「馬鹿だなこいつら」と思うような奴がいるんだ。そういう人が年を取って、一つの音楽をずっとやっていくことって大変なんだなと思ったり、一つのことを唄ったり、作ったり、書いたりしている人って、もしかしたら羨ましい人なのかもしれないと思ったから「君、いつから会得したの」って言ってくるんじゃないかな。
佐野◆同じことを映画の撮影でいっしょになった三上寛さんも言ってました。「最初は奇人とか怪人とか言って驚くんだよ。それからな、無視の時代がくるんだ」って。（笑）「無視されるんだよ。これは辛いぞ。何をやっても無視だ」。「その後にな、諦められて、こういう人間もいるんだと、存在が認められる」と言ってましたね。
遠藤◆同じことをちゃんとやってるからだよね。変わる奴もおかしいと思うんだよ。俺がギターを持った時、1966年だから学生運動がすごかった。フォークソングなんかみんなそうじゃない。
佐野◆反戦フォーク。
遠藤◆そうじゃないと本物じゃないと思う奴が多かった。俺は学生運動に直接タッチしたことはないけど、その嫌なところも見ているんだ。
音楽でも何でもそうだけど、「俺の音楽が分からないなんて、お前ら頭が悪いんだろう」と言うのは最低でしょ。文章でもそうだけど、分からせるというのがもの作りの根本だよね。自分だけが分かった文章じゃなくて、平易な言葉で書いて、自分はこうだと、まずは自分に伝えるために書く。音楽でも、自分のために唄うでしょ。良かったよと言われたら、ああ生きてて良かったと思うでしょ。
自分個人の歌が唄えなかったら、全体主義、軍国主義の世の中にいることになる。自分のことを守るために唄うということは、民主主義ではなく板垣退助の民権主義だと思うんだ。その時代に戻った方が良いと思うんだよね。
民権主義とはちょっと違うけど。日本で最初の人権宣言と言われている「水平社宣言」（1922年）の時代に戻るべきだと思うんだよ。俺は部落解放同盟の前身の全国水平社で西光万吉（さいこうまんきち）が起草した「水平社宣言」が、マルクス、エンゲルスの「共産党宣言」よりもすごい文章だと思ってる。
その時代に立ち返って、一人一人が自分の権利を勝ち取るところからはじめるべきだと思うんだ。それが本当の意味での民主主義の根本だから、それが出来たら政治をやっている人間にとっては一番怖いことだと思うんだ。一人一人が自分の歌をきちっと唄うことが、これが本当の反体制なんだよ。俺は最初に唄いだしてから、その信念はずっと変わらないんだ。どんなことがあっても俺は自分の歌を唄うよというのは決意だからね。
体制という言葉も嫌いだけど、体制のなかで生きて行くしかないから反体制という言葉も嫌いなんだけどね。
テレビで筑紫哲也が「ローリング・ストーンズは反体制だから本物のロックだ」みたいなことを言ってたけど、たぶんそういうことを思ってる人って多いと思うんだ。そんなこと言うのって“ド素人”じゃない。ニュースに関しては筑紫さんはたいしたものだと思うよ。いなくてはならない人だけど、でも音楽に関しては「ド素人は、すっこんでろ」と思うよね。
佐野◆うはははははー。
遠藤◆佐野くんは演技をちゃんとやっているプロなわけだから、佐野くんが見て「あの演技はダメです」と言えば、「ええっ、違うだろ」と思っても言わないことがあるじゃない。でも逆に、平気で言ってくる奴もいるじゃない。
佐野◆ああ、いますね。
遠藤◆そこまで言うなら、こっちも言ってやろうかと思うような奴がいるよね。「そこまで言うなら、お前がやってみろよ」と言ってやりたくなるような奴がいる。俺も佐野くんも、そんなこと言わない方だから、言わないことを良いことに言ってくる奴がいるじゃない。そういうのは“ド素人”だな。
誰でもそうだけど、自信がなくなると理屈を言ってみたくなるじゃない。
佐野◆理屈と表現していることが違うと問題ありますよね。
遠藤◆それは嫌だよね。俺は、それはないと思ってる。レコーディングする前に何度か唄って、それでちょっとクサいかなと思うような部分は全部取るようにしてる。自分が人に説教してる暇なんてないし、唄ってて自分の心に恥ずかしいどうかで決まるわけだから、恥ずかしい部分は削るよね。音も、「これって変に向こうっぽいよなー」と思うようなところは外すようにしてる。
でも、ニール・ヤングは意識したな。ボブ・ディランも意識したけど、みんな同じ人間なんだなと思う。向こうのまねして作ったこともないし。ただ、ニール・ヤングは似てるなと思う。Amではじまると、あっニール・ヤングもAmだ、似てるなーと思ったり。
佐野◆バッファロー・スプリング・フィールドの時からそう思ってましたけど。まあ、いまやアメリカの遠藤賢司ですが。（笑）

★1999年12月12日新宿ロフト。共演の面々。遠藤ミチロウ、大槻ケンヂ、原マスミ、佐野・・・

★新宿ロフト打ち上げ。「ばるぼら」にて。

★ニャア〜🎶

★渋谷のタワーレコードのイベントにて。映画「20世紀少年」の頃。佐野、エンケンさん、「20世紀少年」の原作者、浦沢直樹さんと。
主人公の名前は遠藤ケンヂ!!

▼ 『遠藤賢司実況録音大全 [第1巻] 1968-1976』発売（2007年）

★エンケンさん還暦記念ライブの打ち上げ・・・渋谷のBYGですね。真ん中はNHKの音楽番組で当時よくご一緒させていただいた中川緑アナ。

佐野◆還暦のパーティーはすごかったですね。
遠藤◆来てくれてありがとう。
佐野◆あのパーティーに来ていた頭脳警察のパンタさんとかトシ（石塚俊明）さん、鈴木慶一さんとか、皆さん付き合いが長いですね。
遠藤◆パンタとか慶一はお互いに知ってたんだけど、俺がちょっと先輩だから、話しづらいところがあったかもしれない。
佐野◆『遠藤賢司実況録音大全』を聴けばこれまでの道程は分かると思うし、いつ出るか分からないけれども湯浅学氏の『エンケン大百科』を読めばいいと思いますが……
遠藤◆出るのかな？
佐野◆10年くらい前も取材を受けた覚えがありますけど。（笑）
遠藤◆みんなに「あれいつ出るの？」って訊かれるんだよね。
佐野◆湯浅くんも「今年はやるから」っていつも言ってるんだけど。（笑）

★純音楽居士、遠藤賢司。2018年1月31日、渋谷クアトロ。71歳の生誕祭にて。僕は「ほんとだよ」をエンケンさんに捧げました。

遠藤賢司（えんどうけんじ）
1947年1月13日、茨城県勝田市（現ひたちなか市）生まれ。
1969年2月にシングル「ほんとだよ／猫が眠ってる」でデビュー。1970年4月、初アルバム『niyago』を発表。デビュー30周年となった1999年にベスト盤『エンケンの四畳半ロック』を発表。2002年6月、デビュー33周年・55歳記念アルバム『幾つになっても甘かあネェ！』を発表。還暦記念日である2007年1月13日、10枚組未発表音源BOX『遠藤賢司実況録音大全 [第一巻] 1968-1976』など34枚の公式アルバムがある。日本が誇る純音楽家。
2016年がんが見つかるが闘病しつつライヴ、レコーディングもおこなう。2017年10月25日死去。享年70才。
遠藤賢司秘宝館 http://enken.com/wp/

佐野史郎（さのしろう）
1955年3月4日、山梨県山梨市生まれ。2ヶ月で東京、世田谷区代田橋に引っ越し、2歳から6歳まで練馬区桜台で過ごす。小学1年生3学期に父の実家の島根県松江市に戻る。
1975年に劇団「シェイクスピア・シアター」の創設メンバーとして参加。1980年、唐十郎主宰「状況劇場」に入団。1986年、林海象監督『夢みるように眠りたい』に主役で映画デビュー。1992年、テレビドラマ『ずっとあなたが好きだった』の冬彦役でブレイク。以降、映画監督、音楽家などとしても活躍中。
橘井堂　http://www.kisseido.co.jp/

2007年2月1日収録（構成・小川功）
＊このインタビューの一部はミュージックマガジン増刊「遠藤賢司　不滅の純音楽」に掲載されました。そちらも是非、ご一読を!!
ミュージック・マガジン http://musicmagazine.jp/published/mmex-201802enken.html

「ユリイカ」総特集=遠藤賢司ー言音一致の純音楽家 1947〜2017 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3114 にも「ほんとだよ　言音一致の純音楽家遠藤賢司」として寄稿しております。併せてお読みいただけますよう。

★2007年、インタビュー収録後訪れた当時のエンケンさんち近くの駒沢大学のカレー屋さんにて。