橘井堂 佐野
2000年4月1日

「月ノ光」ゲスト・小日向文世
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★カール(佐野史郎)と愛人レイン(石川真希)を非難するレインの夫ヨーゼフ(小日向文世)。
今日は「月ノ光」の再演に、初演から引き続いて出演なさっている小日向文世さんにきていただきました。

佐野◆「月ノ光」は5年前の初演の評判がすごく良かったんだよね。その時の小日向さんは、今回岡本健一くんがやってる二枚目のグラックスの役をやってて、稽古場でもすごく集中していて口数も少なかったし、普段も全然へらへらしたところのない人だったんだよ。
しかも、長台詞とかがカッコ良かったのよ。

石川◆わたしも、すごい素敵な人だと思った。

小日向◆あれから二枚目を演ってないなー。(笑)

石川◆でも、二枚目の花道を飾ったじゃない。(笑)

佐野◆それが今回は180度変わった役になったわけだけど、どうですか? 初演を見た人はビックリだろうね。(笑)

小日向◆前回、谷川昭一郎くんがやってて面白かったし、大阪で本番中にオレがフイちゃって止まっちゃったことがあったぐらいだよね。

石川◆今日は立ち稽古をしてて、小日向さんがいきなり「ピー!」とか言いはじめるから、こんな男と結婚していた女の役なのかと思ってあきれてしまった。(笑)あれー、あの素敵な小日向さんとどっか違うなって。(笑)

小日向さんとは前回の「月ノ光」が初対面だったの?

佐野◆そうそう。だいたい同世代なんだけど、状況劇場と自由劇場ではあんまり交流がなかったからね。

小日向◆全然なかったね。
今回は内容が変わるという話しも聞いてたけど、ほとんど変更はなかったね。

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★芸人佐野の手品の場面も見物。
佐野◆やっぱり、良く出来た脚本だから、竹内(銃一郎)さんも変えようがなかったのかな。完成度が高いからね。
今回二回目だから、前回何にも分からずに演ってたんだということが、良く分かった。外から見て面白いだまし絵のようなお芝居だから、中に入っている僕らにはよく分からないんだよね。

小日向◆本当に、演ってる方は分からなかったね。今回の役でも、役を作っていく上でいろんなやり方があるから、今のやり方でいいのかどうか心配なんだよね。

佐野◆あはっはっはっは、なんだよー。(笑)

小日向◆だって、あんなことやる必要がないといえばないんだもん。

佐野◆そういえば、もっと品が良くて頭のいい人の役だと竹内さんが言い出して、役を変えていったのに、あれはどこにいっちゃったの?(笑)

小日向◆そう言うけど、竹内さんが書いてるのが品のいい中年紳士だというのは苦しいよ。(笑)「アレ アレ アレ?」だよ。

石川◆今回やってて思ったけど、佐野さんてものすごく穿った見方をするよね。そんな解釈してたのって。あまりに裏がありすぎて、表面では何をやってるのかまったく分からない。(笑)

佐野◆そうか。本人は楽しいんだけど、周りに迷惑がかかるんだな。実生活といっしょですよ。
竹内さんに矯正してもらおうと思って、ものすごく姑息な芝居から入ってる。(笑)

石川◆あはははは、それで「そんなに姑息な男に作った覚えはない」と竹内さんに言われてる。(笑)

佐野◆何とかヨーゼフから逃げて逃げて、会わないように、会わないように作ってたんだよね。そしたら姑息すぎると言われてしまった。それで、鉢合わせしたら鉢合わせしたで開き直る。窮地に立たされると開き直るって、まるで普段のオレじゃないか。(笑)

稽古の進みぐあいはどうなの?

佐野◆前回もずいぶん通し稽古をやったよね。

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★刑事ブルームフェルト(松本修)とグラックスの妹グレーテ(藤谷美紀)。
小日向◆飽きちゃうんじゃなかというほど演ったね。今回もけっこう速いよ。
藤谷(美紀)さんが一番セリフが入ってるね。

佐野◆藤谷さんはいいですよ。

石川◆めちゃくちゃいいし、めちゃくちゃかわいい。日本一の美少女って、やっぱり違う。

佐野◆その上に芝居も上手いというのが不思議なところだよ。ちょっと浮世離れした、お姫さまみたいなところもあるし。

小日向◆なんか、意志も強いらしいよ。(笑)

佐野◆前回の広岡(由里子)さんとはまた全然違うからね。

石川◆藤谷さんと全然違うけど、広岡さんも良かった。

やっぱり同じ脚本でも、役者さんが変わると全然違うものになるの?

小日向◆役者が代わると、全然違うものになるということだね。

佐野◆松本修さんとか、立ち稽古の初日、あんなに緊張して大丈夫かなと思っ たけどね。

小日向◆そりゃあ、緊張するでしょ。だって舞台に立つのは十何年ぶりでしょ。しかも普段は劇団「モード」の演出家なんだし、初日の松本さんの緊張感はすごいだろうな。
その点、真希ちゃんは全然緊張しないよね。質が違うと思った。

石川◆わたしは最初から出来るなんて思っていないし、ボーッとしてれば演出家が何とか言ってくれるだろうと思ってるんだよね。
でも稽古をやってて、松本さんのやっている刑事のブルームフェルトさんて、こんなに中心部に関わってる人だったんだって、認識を改めたよ。

佐野◆オレもびっくりした。刑事が妹を好きだという筋も頭から飛んでたし。

小日向◆松本さんをブルームフェルトさんに選んだのも竹内さんでしょ。それも面白いよね。
竹内さんの「こうして、ああして」という指示もものすごく面白い。
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★カール(佐野)とレイン(石川)。

佐野◆今回、再演ということもあって細かくなってるね。

小日向◆退屈しないじゃない。内面がどうのこうのと言うわけじゃなくて、「振り向いてから喋る」とか具体的なことで言ってくれるからね。

佐野◆あのダメ出しは、竹内さんが以前、映画の助監督だったということを考えると良く分かるね。カットカットでああいう風にダメを出されるのが一番的確だもん。

抽象的なダメの出し方をする演出家もいるんだ?

小日向◆います、います。

佐野◆大嫌い、そういう人。(笑)

小日向◆観念的で何言ってるのか分からない人もいるよね。

佐野◆小日向さんとはWOWOWの「怪」の3話でもいっしょだったんだよね。京都の撮影所はいいよね。松竹の現場は大好きだよ。

小日向◆楽しいね。キチっとしてて、プロの集団だよね。

佐野◆そうだよね。TVドラマの現場とかに行くと本当にそう思う。

小日向◆「怪」の監督も良かった。なにしろ、速いんだよ。

佐野◆あの緊張感だもんね。

小日向◆スタッフがばーっと一瞬で動くでしょ。

佐野◆あれが気持ちいいんだよね。動くのは速いよー。裏でもみんなちゃんと観てるからね。まあ、カメラも、録音部の人もみんな巨匠で、すごい映画を撮ってきた人だからね。「なんか、どっかでチーっというとるで!」っていうライトのノイズをチェックする言い方が怖かったな。(笑)
でも、あの怖さがあると、役者としては身体が楽になるんだよね。あれはなんなんだろうな?

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