橘井堂 佐野
2014年4月6日

蟹江敬三さんご逝去
蟹江敬三さんが亡くなられた。
胃癌、69歳。
人はいつかは亡くなるものだということはわかっていても、ついこの間まで何も変わらずにいらした方が次々と逝ってしまわれると、次は自分の番か・・・と思わざるを得ない。
それほど、親しみを感じ、また先達の一お人として、僕にとって特別な存在の方でもあったのだ。

蟹江さんとの出会いは1989年、TBSのドラマ「女優小夜子の最後の冒険」だったと記憶します。
ボディペインティングアートと政財界の汚職という、アンダーグラウンドの匂いたつ奇妙なドラマでしたが、そこでの蟹江さんの悪役ぶりには共演者としても憧れたものでした。
あの頃のTBSのドラマは・・・というか、それまでも久世光彦さんや実相寺昭雄さんなど、トンがった演出陣を多く送り出していましたし、社風として無頼な感じがあったような気がします。
その社風は、今でも受け継がれ、現在に反影されているのでしょう。
その後も何作も共演させていただきましたが、NHKの大河ドラマ「跳ぶが如く」の薩摩藩士役、誠忠組の仲間として西田敏行さんや鹿賀丈史さん、内藤剛志さん、益岡徹さんらと共に過ごした日々は忘れられません。
男臭い幕末の世界は、決して洗練されてはいなかったけど、熱く一年を過ごしたことを覚えています。
青年たち・・・とはいえ、みんな30前後のなか、一人、さらに年上の仲間が蟹江さんでした。
全員で駆けるシーンで、蟹江さんは一人、転んでしまい、みんなから「40代は〜!!」と野次られていたのも微笑ましく想い返されます。
温厚なお人柄な上に、どちらかというと寡黙な方でしたから、共演者のみんなも、ついつい甘えがちだったのかもしれません。

そして、忘れられないドラマといえば「抄粧妙子 最後の事件」。
当時は聞き慣れない科捜研〜科学捜査研究所〜を舞台としたドラマで、柳葉敏郎さんや蟹江さんらと、のたうち回りながらドラマに挑んでいたことが昨日のことのようです。
最終回、僕は蟹江さんに拳銃でめった撃ちにされるのですが、本当に恐ろしかったです!!!

昨年、久しぶりに名取裕子さん主演のシリーズ「京都地検の女」で蟹江さんとお会いした時は、とてもお元気そうに見えたのですが・・・。
女優として活躍なさってる娘さんらのことなど、色々お話させていただきました。
本当に、毎日毎日、一瞬一瞬が大切なのだ・・・と思わされます。

蟹江さんは、状況劇場出身の僕にとって、石橋蓮司さん、蜷川幸雄さんらと結成した伝説の劇団「桜社」の公演「盲導犬」で語り伝えられていたので、その想いも強かった。
デビュー間もない桃井かおりさんが「婦警2」の役だったことや・・・。
若松孝二監督の「聖母観音大菩薩」でのアイヌ民族の男の役も素晴らしかったな・・・柳町光男監督の「さらば愛しき大地」での佇まいも忘れられない・・・。
「あまちゃん」で全国のみなさんに愛され、俳優人生を悔いなく全うなさったことと思う。

安らかにお眠り下さい。
合掌。

目次ヘモドル