橘井堂 佐野
2021年4月29日

隆大介さんのご冥福をお祈りいたします

隆大介さんが亡くなられた。
64歳。
同年代の俳優さんの訃報が届くたび、我が身も振り返る。
還暦を迎えた時、「さあ、これからだ!」と思ったことを思い出す。
60代は、まだまだ学ばなければならないことがたくさんある。
「まだまだ、これから!」なのだ。

隆さんとの初共演は昭和の終わりに撮影していた、五社英雄監督「2・26」
松竹京都撮影所。
大東亜戦争へと突入していく気配のなかで、青年将校たちが、腐敗した陸軍、政府上層部に下克上を叩きつけた、クーデターとされた事件は、昭和史を語る中で、あまりにも有名だが、今の若者たちにも伝わっているだろうか?
隆さんも、僕も青年将校役。
撮影中は、みな、その世界に入り切っていたのを思い出す。
奇しくも、青年将校決起の日の撮影は、あらかじめ予定されていたスケジュールだったのだか、昭和天皇が崩御なされ、新元号「平成」が発表された日だった。
昭和、平成、令和と過ごしてきた俳優人生。

隆さんとの最後の共演は、同じシーンはなかったけれど、雪村葉子原作、精神科医の和田秀樹監督「私は絶対許さない」
私は、レイプのトラウマを抱えた女性(平塚知瑛)に寄り添う医師役。
変態役なのだが、自分では、素直な優しさから接している心持ちを失わないようにしていたつもりだ。

この映画で、隆さんは、静かながら迫力のあるヤクザ役。
少女時代を演じた主演の西川加奈子さんを取り巻く、白川和子さん、美保純さん、友川かずきさん、三上寛さん、みなさん、圧巻でありましたが、その中でも、隆さんの存在は鬼気迫るものがありました。

ひとつひとつの作品には命が宿っています。
永遠の命を大切にと、隆大介さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます、

橘井堂