2018年8月24日
菅井きんさんのこと |
またしても訃報が届く。
92歳でお亡くなりになられた菅井きんさん。
近年、お仕事はなさっていらっしゃらなかったようだけれど、女優として人生を全うされ、どんなに憎まれ役をやっていても愛らしいその姿に学ぶことは多く、尊敬する大先輩だ。
ドラマなどで何度か共演させていただいたが、今や、自分がおじいさん役をやる年齢になり、若かりし頃に父親役、母親役、目上の役として共演させていただいた大先輩たちの姿がまぶたの下に浮かび上がる。
日本テレビで、かつて水曜グランドロマンという枠があり、中島丈博さん脚本、伊藤祥二監督「老人病等の仲間たち」でご一緒させていただいたのが最初だった。
母親役に元・宝塚のトップスターで、銀幕のスタアとして活躍なさった久慈あさみさん。
最初からマザコンっぽい役だったな。
認知症になった母親が入院した先は「老人病棟」と言われる大部屋で、撮影中、病室のキャストのみなさんの会話に歴史を感じていた。
「築地小劇場が・・・」と思い出話に花が咲いていらしたっけ。
キャストの中のお一人、浜村純さんはその時にすでに90歳近かったと思うが、矍鑠となさっていて、テストの時から全力で相手役の僕にぶつかってきてくださり、「歳をとったら、こんな先輩のような俳優になりたい」と憧れたのをよく覚えている。
その時、菅井きんさんは、老人病棟の中で疎まれる役柄だったけれど、浜村さん同等、テストの時から一所懸命に演じていらしたのが印象的だった。
ああいう姿を目にして、振り返れば、今は亡き先達たちに現場で実に多くのことを教わってきた。
あの時の新婚の妻役は若村麻由美さんだったが、今でも二人で共演するときには、当時のことを思い返しながら臨んでいる。
実に純朴な役柄の二人だったが、最近の僕らは奇人変人の役で出会うことが多いかな?^^"
映画を始めた頃、伊丹十三監督「お葬式」が面白く、松竹大船調の古き良き日本映画を観まくっていた頃でもあったので、俳優としてのあり方を、温故知新、古き作品から学ぶきっかけともなった映画だったかもしれない。
あの中での、奥村公延さんと菅井きんさんご夫婦の姿は本当に素晴らしかった。
強く印象に残る菅井きんさんのお姿だ。
けれど、菅井きんさんはどうお思いになるかわからないけれど、ゴジラファンとしては、第1作目の「ゴジラ」での女性代議士役は外せない。
「バカモノ!!」と男勝りに怒鳴りつけるシーンは、当時の世相を反映したセリフだったろうけれど、今でも現代を象徴するシーンとして古びることはない。
必殺シリーズの主水と母親の、マザコンスタイルがドラマの中で受け継がれ、後輩として、そのスタイルを踏襲し、学ばせていただいていたことに今更気づく。 菅井きんさん、ありがとうございました。
安らかにお眠りください。
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