橘井堂 佐野
2022年3月18日

宝田明さん、ありがとうございました!!

宝田明さんが肺炎により、亡くなられました。
87歳・・・人生100年と云われるからばかりでなく、宝田さんなら百まで俳優として生き抜くに違いないと、どこかで思っていました。
それぐらい、いつもお元気な印象でいたからです。
歩くことを心がけ、姿勢も良く、常に若々しくいらした宝田さん・・・。
なので、こちらが67歳で、この先、どこまで俳優として生きていけるのだろう?と不安を抱えるなか、悲しみや寂しさと同時に、叱咤激励される想いでもいます。

「一本だけ好きな映画を選べ」と訊かれる時、いつも宝田明さん主演の映画「ゴジラ」は外せませんでした。
小津安二郎監督作品や、アンゲロプロス監督作品、クロード・ルルーシュ監督「男と女」、スタンリー・キュブリック監督「2001年宇宙の旅」など、その時のタイミングで選ばれる作品は違ってはいましたけれど、「ゴジラ」は、間違いなく、僕の人生を導いてくれた映画の中の一本です。

宝田明さんと初めてお会いしたのは、2004年公開の映画「ゴジラFINAL WARS」の時。
宝田さんは国連総長役で、僕はワンシーンだけの出演ながら、宝田さんに切り付ける謎の神父役。 当時から、僕はゴジラは、クトゥルフ神話のダゴンはゴジラのことではないかと思っていたので、アドリブで邪神召喚の呪文を唱えてしまったりするオタクぶり。
その時にも、ゴジラへの思いを熱く語っていましたけれど、どういう伝手だったかは覚えていないのですが、実はそれ以前に、「ゴジラ」40周年記念でリリースされたレーザーディスクの特典として、第一作目の「ゴジラ」の復刻シナリオが付いていたので、お願いして、宝田さんにそのシナリオにサインをしていただいていたのです。
しかも、役名の下に。
その頃、「ゴジラ」のヒロイン、河内桃子さんと舞台でご一緒し、この機を逃してなるものかと、そのシナリオにサインをしていただいたのですが、となると、どうしても宝田さんのサインもいただきたく思い、一面識もなかった僕ではありましたけれど、ゴジラへの想いを込め、手紙をしたため、シナリオをお送りした経緯。
ご丁寧なお返事をいただき、どこかでお会いできれば・・・との内容だったのですが、それはその後、ゴジラシリーズでの共演という夢のような舞台で実現したのです。

その後も、2008年に日本映画専門チャンネルで放送された「ゴジラ完全放送 スペシャル番組 ゴジラが来る!」でも共演させていただきました。
私は進行役を仰せつかり、ゲストのみうらじゅんさんとはファンとしてゴジラ愛を熱く語り、中沢新一さんがゴジラの背景を分析し、富山省吾プロデューサー、大森一樹監督、川北紘一特技監督は制作現場でのご苦労を語っていただきました。
もちろん、宝田明さんにも撮影当時のお話を聞かせていただいたのですが、番組中、途中ドラマ仕立てで、僕は平田昭彦さん演じた芹沢博士のふん装で登場。宝田さんとの芝居のやりとりもありました。
すれ違いざまに「南海サルベージの尾形さんではありませんか!!??」と呼び止めるシーンのことは忘れられません。
宝田さんに芹沢博士のふん装でごあいさつした時、「お〜〜、ヒラタァ〜〜〜!久しぶりだな〜〜!」と返してくださったことにも感激でした。

世界的に有名な「ゴジラ」の主演、宝田明さんですから、2014年公開のギャレス・エドワーズ監督「GODZILLA」にもカメオ出演として撮影にも参加なさったそうですが、残念ながら、本編ではカットされておりました。
それでも「GODZILLA」のプロモーションのため、宝田さんは、あらためてゴジラについて、強く、反戦、反核のメッセージを唱えていらっしゃいました。
アメリカでのワールドプレミア公開の際には、僕も吹き替え版に参加させていただきましたし、日本のゴジラ映画出演俳優としてご招待いただき、ゴジラ映画のこれからのことを、出演していた渡辺謙さんや東宝の皆様方とパーティーの席で語り合うことのできた時間も貴重でした。

その頃、宝田さんとは「週刊現代」などの取材でも何度かお会いする機会がありました。
「次の作品ではね、佐野くん、僕は、ゴジラの目を見て指差し、セリフを言おうと思うんだ。君はね・・・」と、次なるゴジラ映画の想いも熱く語っていらっしゃいました。
実現はしませんでしたが、ゴジラとは何なのか?・・・その本質の問いかけばかりは、絶えることなく、後世に伝わることと信じます。

宝田明さん、本当にありがとうございました。
安らかにお眠りくださいますよう。

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★「南海サルベージの尾形さんではありませんか!!??」と呼びかけるシーン。

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★ゴジラへの想い、永遠なれ!!

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★復刻のシナリオ。

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★文字通り、宝ものです。 おふたりとも、本当にありがとうございました‼︎

橘井堂