橘井堂 佐野
2018年8月10日

津川雅彦さんのご冥福をお祈りいたします
津川雅彦さんと共演させていただいたのは、ここ10年ほどの間のことで、NHKの時代劇や、映画「偉大なる、しゅららぼん」や「たたら侍」が印象に残っている。
最後にお会いしたのは、「たたら侍」の舞台挨拶の時。
お痩せにはなっていたけれど、映画のヒットを心から願っているお姿が目に焼き付いている。

津川さんは、世代を超えて様々な俳優陣を集め勉強会を開いていらしたそうだ。
俳優の仕事は、演じることだけではなく、あらゆる感性を駆使して現場に臨めるようにとの想いをお伝えになりたかったのではないかと思い巡らせる。

学ぶ姿勢は、自分の生き方への問いかけとも重なるだろう。
ネット社会の中で、様々なものの考え方が交錯する中、凛として自分を持ち続けることの難しさは誰しも感じていることかもしれないけれど、他者を傷つけ、攻撃するのではなく己を守る方法を身につけるには一体どうしたら良いのかと、先輩たちにすがりつきたくもなるが、還暦過ぎた俳優がそれを言ったら、それこそどうにもならなくなるので、自分で考え、行動するしかない。

津川さんの想いがどのようなものだったのかはわからないけれど、この国のあり方に対しての明確な理想をお持ちになっていたのかもしれない。
僕には、それが、曖昧で、クニを想う時、近代ではなく、古代へ、古代へと想いを寄せることで未来が見えるような気がしてならないのだから、なんとも非現実なものの見方なのかもしれない。

一度、腹を割って津川さんとお話しさせていただきたかった。

ファンとしては10代の頃、日本テレビで放送していた「2丁目3番地」や「3丁目4番地」での産婦人科医役が好きだった。
石坂浩二さんと浅丘ルリ子さんのコンビに、原田芳雄さんが加わって、津川さんとはいっつも喧々諤々!!!
あんな横丁の世話物のようなドラマに、今も憧れを抱いている。

あちらでは、長門裕之さんもいらっしゃるし、兄弟仲良くお過ごしくださいますよう。
最後までその美意識を貫かれ、俳優人生を全うなさった津川雅彦さんに、心からのご冥福をお祈りいたします。

合掌。
                         佐野史郎

橘井堂