橘井堂 佐野
2001年4月26日

南大東島紀行…「ゴジラのいる島」取材旅行2
4月12日
那覇空港を午前9時に発つ南大東島行きの飛行機は30人余りを乗せるプロペラ機。
以前、CMの撮影でフィジー諸島に出かけた時、せいぜい10人乗りのプロペラ機に乗った経験があるので、全然平気。
初めて海外旅行をした時は(ヴェネチア映画祭に招待された32歳の時だから、ちと遅いが、まあ、劇団生活が長かったので無理もないことをご理解願いたい)、緊張のあまり三叉神経痛になったことを思い起こすと、よくぞここまで飛行機に馴れたものだ。
仕事柄そんなことは気にしてられないが…。
というより、飛行機は好きな方だと思う。
それに、ジェット機よりプロペラの方が、アナログな感じで、反って安心感がある。
どうして飛行機が飛ぶのか…といったことが解り易い感じがするのだ。
変?
空港のお店で、朝っぱらからソーキそばをかっ込む。
大好きなのだ。
ここにいる間は食べられるだけ食べてやる!
那覇空港は以前に比べて整備が進み、随分奇麗になったし、大きくなった気がする。
あ、やっぱりサミットとかあったからか…?
インターネットサービスとかも、凄く環境が良いと云うし。
オキナワって、やはり今でも、古に西洋が憧れたという桃源郷、東方の楽園のなのかな?
しかしな、基地問題や、住んでいる方々でなければ決してわからないような問題も山積みなのだろうしな…。
迂闊に発言できることではないけれど、それでもやはり、南西諸島、八重山諸島が素晴らしい島々に思えて仕様がない。
そうだ、友人であり、劇団燐光群主催の劇作家、坂手洋二氏は、オキナワ問題を鋭くえぐった作品をいくつか書いているので、読んでみてはいかがだろう?
的確に捕らえていると思う。

さて、この日、沖縄は4月だというのに、かなり冷え込んだ。
18度くらいだったと思うから、異常気象なのだろう。
空港に向かうタクシーのなかで、「涼しいですね」と言ったら、「寒い」と運転手さんが言っていたので、沖縄では真冬なみだったのだろう。
ともあれ、プロペラ飛行機は無事に離陸。
1時間ほどで南大東島に到着した。
沖縄からは東へ360kmほどだという。
フィリピンプレートに乗っているので、あきらかに沖縄とは違う島々だ。
ところで、南大東島に降りる人々のなかに観光客らしき人は、数人しか見当たらなかった。
小雨。
早速、飛行機やら島の景色をビデオにおさめ始める。
一人旅の青年…とは言っても30代か…?案外若かったのかもしれないが、写真を一緒にと頼まれる。
空港で「ホテルよしざと」の若ご主人がバンで迎えに来てくださった。
青年や、ほかのお客さんたちも、もちろん一緒だが、皆、仕事で滞在する佇まい。
なにしろ、この島にはホテルと名の付くものは一軒しかないのだ。
この設定も、既に小説と同じである。
ホテルまでは10分ほど。
すぐに到着するも、「港を見に行きませんか?」と誘ってくださる。
皆、「ナンデ、サノシローがこの島に着たんだァ―」といぶかしがっているのがわかる。
他のお客さんたちが降りた後、港へ。
島には港が3つあり、その日の風向きによって船が着く場所が違うのだという。
つまり、風が吹きつける岸の反対側の港が比較的波が穏やかというわけだ。
冬の間は北風が吹くので南の亀池港を、夏の間は南風なので北港を、東風が強ければ西港を、東の海岸ばかりは年中海が荒いという。
で、この日は亀池港を。
漁に出る船も同様に同じ港を利用する。
ただし、現在漁のための新しい港を西側に建設中で、既に一部は仕様可能となっている。
小型のものに限られてはいるようだが…。完成までにまだ15年ほどかかるという。
そのために、建設業社の人たちの姿が目立っているのだ。
島は、ほぼ、まん丸で、そのぐるりは断崖絶壁になっている。
その為、船は接岸出来ず、クレーンで人荷を積み下ろししていた。
漁の船自体も、人を乗せたまま、クレーンで持ちあげ、下ろすのだ。
ホテルの若ご主人は長髪で、背中までとどく髪を結わえ、カウボーイハットスタイルの麦わら帽子を被っている。吉祥寺のロックの流れるバーのマスターといった佇まいだ。
マスター…いや、若ご主人は港に積み下ろされたコンテナから、手際良くホテルに届いた荷物をピックアップする。
宅配便の配達業務も兼任していて、その品物も、島中に配達するのだという。
コンテナは冷凍専用のものもあり、生鮮食品も難なく入手することが出来るのだ。
まだ着いたばかりだが、島の印象は、決して寂しい感じがしない。
むしろ、何か活気がある。その訳はまた説明するが、若ご主人は、島の現状を短い移動時間のなかでてきぱきと話してくださった。
そう、宅配に僕もお付き合いし、その間に島を廻って、名所や島の地理の説明なども受けたというわけだ。
ここが村長さんのお家…ここが新しい村役場…精糖工場…。
早速、取材は始まっているのだ。
さて、ホテルに戻って、とりあえず荷を解こう。

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