★「怪」の企画・脚本家の山田
誠二さんもいっしょに出演しています。
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今日は「怪」の総括ということで、京都まで呼んでいただきありがとうございました。
最終回の「福神ながし」には原作の京極夏彦さん、水木しげるさん、荒俣宏さんまで出演するというマニア垂涎の作品になったわけで、こういった配役などは誰が決めるものなんでしょう?
出演もしている、企画者であり脚本家の山田誠二さんや監督の酒井さんたちが決めてるんだな。山田さんははじめて会った途端に、もうヴィデオを回してた人だから、かなりオタクなんだとわかったよ。(笑)
出待ちをしていて、「ちょっと、写真を撮らして下さい」と言って、顔の近くまでカメラを寄せてくる人たちと似てた。(笑)
山田さんはゴジラ・オタクでもあるから、そうした人たちがいるからやりやすいんだけどね。
「怪』は視聴率も良くて、WOWOWの方も力を入れた甲斐があったみたいだね。
そうなんだよ、映画としての公開も決まったみたいだし。
田辺誠一くんや遠山景織子さんとの相性も良かったし、3話に陰陽師の役で出演している近藤正臣さんにしても、みんな妖怪とか好きなんだよ。近藤さんにいたっては、小さいときに近くに安倍晴明の末裔がいたとかいう話しだった。
人知れず、式神を飛ばしたりしてたのかなー?(笑)
★水木しげる、京極夏彦、宮部“クロスファイア”みゆきさんたちと。
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4話は舞台の稽古もあってあんまり出ていないんだけど、岸部一徳さんとか、杉本哲太さんとか、船越栄一郎さんとかいい配役なんだよ。箱に福が集まってくるという話しで、その福助が荒俣さんなんだけどね。(笑)
さっき見せてもらったけど、すごい福助だったなー。最初はこれ俣という作家の役で「えっ、都物語!」なんてオレのセリフもあったんだけど、なんでか知らないけど福助になったらしい。(笑)
「都物語」というのは「帝都物語」という意味なのね。でも、福助役の方が良かったんじゃない?(笑)
荒俣さんはすごく喜んでたみたいだね。
福助コレクターだからね、荒俣さんは。
それに、山田さんだけじゃなくて監督の酒井信行さんもスキモノなんだよ。助監督からの叩き上げで、「必殺!」シリーズとか時代劇をやって来た人なんだけど……
絵師役の水木さんに実際に目玉オヤジを描いてもらって、それを監督自ら強奪していたものね。
役得シリーズだよね。オレも掛け軸にしようと思ってる。(笑)「よーい、スタート」、フィルムがもったいないから、すぐに「カット」というのが普通なのに、水木さんのシーンは長回しなんだもん。描き終わるまで待ってるの。
監督がちゃんと描いてもらおうとして、何度もテストをしてたなー。「もう一回お願いします」なんて言って。
15年ぐらい前に竹中直人がネズミ男役で水木さんと共演したことを自慢していて、くやしい思いをしていたから、やっと望みがかなったよ。えへへへへ。(笑)
江戸のカタキを京都でとったわけだね。
★マゲがなんとも違和感のない、そしてなぜか舌を出す水木しげる先生と。
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水木さんに「ああ、いつもテレビで観てるから、はじめて会ったような気がしない」と言われたんだけど、調布に家族揃ってお伺いしたことは忘れられてたな。(笑)眼鏡も外してズラをつけた百介の格好になった段階では、さらに誰だか分からなくなったんじゃないかと思うよ。(笑)
でも、撮影中にも話をしてたよね。
のっぺらぼうの話をしていたら、水木さんは「水木さんはよく見るんだ」って妖怪をよく見るというようなことを言ってた。自分のことを「水木さん」って言うんだね。(笑)
矢沢永吉の「ヤザワは」というのと同じだね。
ええー、同じかー? ちょっと違うだろ。
水木さんは「人間は100歳ぐらいになると妖怪が見え始める。200歳でちゃんと見える。でも、妖怪が見え始めるようになったら死んじゃうんだな。わはははは」って言ってたよ。
今回は、ずっと京都での撮影が続いていたね。
雪が降ってる日に、琵琶湖に飛び込んだりしてた。(笑)
六平直政とかいっしょだったし、元・近鉄バッファローズの加藤哲郎さんとか織田無道さんとか、怪物ランドの赤星さんとか、火野正平さんとかいっしょだった。
火野さんは演技に執着するところがなくて、カッコよかったな。思わず、サインもらっちゃった。(笑)火野さんは1974年頃に、森本レオ、仁科明子といった人とのドラマがあって、それが大好きだったんだよね。
高校時代からドラマにハマリやすいところがあったからね。
ああっ、そう言われればそうだな。だいたい、当時のドラマは面白かったんだよ。(笑)
3話は鉄板の上で猫踊りさせたりして、アブナイ話しだった。地上波ではちょっと流せないだろうな。妖怪ものだと、そんなことも許されてしまうからいいというところもあるんだろうな。
あと時代劇は衣装が派手でいいね。江戸のポップさ加減を十分に利用してるよね。
大衆文化になったところの雑多なパワーがすごいんだろうね。
松竹には衣装だけじゃなくて。セットにしても、小道具にしても、何十年もの歴史があるからモノが違うよね。監督を始め、時代劇を良く知ってるし、だから奇抜なことも出来るんだよ。大覚寺をはじめいいお寺をロケに使えたり、京都には映画文化がまだ生きているね。
★嶋田久作、火野正平のシーン。
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山田さんの話に戻れば、テレビの脚本家に頼むと整合性ばかりを求めて、たとえば島での洗脳が行なわれていたとすると、その洗脳に気がついてしまうという筋にしたがるらしいんだよ。でも、それはシステムのことを言っているのであって、別に洗脳でも何でもないことなんだよな。そこの違いを認めたがらないらしいんだ。
妖怪にはその非整合性が必要なんだけどね。そんな妖怪モノといっても、京極さんにはクールなまなざしがあるから、映像化は難しいと云われていたにも関わらず、ドラマとして成立したんだろうな。
ちょうど嶋田(久作)君も夏に公開の映画『さくや』の忍者役で撮影所に来てたんだね。
うまく連絡がついて打ち上げにも来れたから、いっしょに火野正平さんや、違う組だったけど役所さん、ベンガルなんかと呑みに行ったな。
嶋田といえば、『帝都物語』で美術をやってた『さくや』の監督の原口君が、『怪』でも使いまわしてる妖怪を作ってて、その写真を水木さんが撮りまくってたらしいよ。来年も『怪』がシリーズ化すると面白いんだけどね。