橘井堂 佐野
2002年3月24日



『あわせ鏡』
作詞・作曲:佐野史郎
朝の初めの一筋が
首筋から滴り落ちると
街の屋根を伝って
放射状に広がる
鋭い針のよう

電線と絡まって
君が起きあがったなら
街は崩れてしまうよ

あわせ鏡の瞳のなかに
君の影を写しだすと
止まることのない
脈(ビート)を打ち始める
眩しいのはいつも僕

瞬く一瞬に
君との出会いを喜び
君との別れを悔やむ



『雷の好きな女』
作詞・作曲:佐野史郎
わたしは雷が好き
台風や嵐も好きだけど
この間街を歩いてたら
ビルの向うにチラリと黒い雲見つけた
息が苦しい 髪をかき上げる

髪がはぜるわ危ない予感
指先にチリリとシグナル
行き来する人気付かない
この街角いつでもそうなの
ネガフィルムの色 生温かな風

その時通りはまるでステージの様に
ストロボの中に浮かんだの
風だってゴオと吹いた

わたしは雷が好き
台風や嵐も好きだけど
こうして電気をまとって
踊り出したい今日もシビレルわ
スパーク スパーク わたしはエレキガール



『花の頃から』
作詞・作曲:佐野史郎
膝を抱えて
狭い暗い部屋で
泣きながらこの
レコードを聴いてた
あなたが
見えるよ

どうしてだろう
花の頃から
僕は一度も
このレコードを
聴いたことがなかった

いや 聴いていたのかもしれない
でも でも 通りすぎたままで

膝を抱えて
狭い暗い部屋で
泣きながらこの
レコードを聴いてた
あなたが
見えるよ

みんなが
見えるよ

僕が
見えるよ



『セントラル アパート』
詞・曲 佐野史郎
重い雨粒
街角の古いビルと
辺りのモザイクの
色とりどりを
打ちつけ
崩していく

この十字路
もう何も残っていやしない
流れていたギターの
乾いた音も
雨に流れて
みんな消えてしまった

残された
灰色の壁の染みだけが
誰かを待ちつづけているので
泣く女のかたちになって
涙を 流す

もう降り立つこともないだろう
この交差点
もう降り立つこともないだろう
この交差点

コーヒーハウスの扉を
開けて出て行く
君の姿
横断歩道の信号を待つ
人ごみのなかに
見た気がしたけれど



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『古い本』
作詞・作曲:佐野史郎
朝の光と春風の中を
古いディーゼルカーに乗り
ゴトン ゴトンと
あの町めざして走る

紙魚つき黴たこの本も
古い時間を忘れたか
パラパラ パラパラと
風に戯れお喋りをする

開いた頁はどこなのか
ギラリと光り読めないよ
急な陽射しに白い頁
文字は燃え尽き散らばってしまった

思わず閉じたらトンネルに
真っ暗クラクラと本を落とした
開けたら黒い頁
流れる景色に緑は優しい

それでもあの町に着くまでに
読んでみようとするのだけれど
どこまで繰ってみても
最後の頁が見つからない

朝の光りと春風の中を
古いディーゼルカーに乗り
ゴトン ゴトンと
あの町めざして走る



『いつかねむるひまで』
作詞・作曲:佐野史郎
ねむりたいんだ
ふかく ふかく
ぼくの のぞみは
ただ それだけ

ねづみいろのそらが
とけだして
うすい あおが
のぞきだす

ねむりたいんだ
ずっと ずっと
ぼくの ねがいは
かなわない

ひのひかりが
さしこんで
くらい こころを
てらしだす

いつか
ねむる
ひまで



『しらじら』
作詞・作曲 佐野史郎
白々しさで
苦しくなってしまうんです
君の吐いた洒落なんかも
僕にとっては
君を敵に回してしまう
ようです

白々しさで
遣り切れなくなってしまうんです
君のついた嘘なんかも
僕にとっては
溜息ひとつもつかせや
しないんです

白々とした
空気を残したまま
今頃どこをさまよっているのか
君に会いたい
灰になった身体を風に
まかせても



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